冬獅郎 短編

□隔たり
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会いたくて会いたくて仕方がなかった。
心臓が悲鳴を上げる程、もう耐えられなくて、会ってもその嬉しさに叫び出したくなる。
会えなかった時間を埋めるようにきつく抱き締めて温もりを感じても、夢を見ているようだった。


「…冬獅郎…?」
「………」


自分の名を呼ぶ声が、身体中に染み渡る。
背中に回された腕も指を縫う髪も、全てが愛しいのに手に入らない。
想いは通じ合っているけれど、幻のように儚い。
お前の存在が、俺の存在を不安定にさせているというのに。


こうやって、本気で好きになっている。


時を刻む場所が違うというだけで、二人の間にある壁は穿界門よりずっと、果てしなく大きい。
一日の時間は同じように流れているはずなのに可笑しな話だ。


俺とお前を隔てる大きな壁を、乗り越えたい。
そう思うのに、どんなに考えても俺には不可能だ。
でも、傍にいたい。共に生きたい。同じ場所で時を刻みたい。


必ず見つけ出すから。
お前の気持ちが変わらないのなら。








もういっそ、殺してしまおうか。





END


2007/02/24
春瀬琴音



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