ひとりごと

妄想や書きかけの文など。腐向け注意
◆さいかい(学パロ曽芭)※曽良命日関連 

これは僕がまだ中学生だった頃の話だ。
その頃今以上に人生がつまらなかったと思う。何のために生きればいいのか考えていた。
たしか養父母ともめたんだったか。親がいないことを寂しく思ったことはないし優しい両親だったが、クラスメイトに親について指摘されたのに怒ったことを知った両親は僕を気にかけている。僕にはそれが嫌だった。余計なお世話だ。

修学旅行で長崎に行った。本当は修学旅行にも行きたくなかったが、教師や両親の目が気になったので仕方なく参加した。
そして自由行動のとき、こっそり一人で抜け出してしまったのだ。


何をしたかったわけではない。ただ、知らない街を歩くのは悪くない。
それにしてもここは坂が多い。路面電車があるのも当然か。
集合場所までの道のりは把握しているから、時間内に間に合うように行けるはず。

坂を一人降りていくと、やけに古い店があった。今にも崩壊しそうな店。周りは比較的新しいのに、ここだけ取り残されているようだ。
どうやら本屋らしい。


ガラガラと戸を開ける。そこには古い木と紙のにおいが充満している。何年やっているんだろうか。
入口入ってすぐに、雑誌が並んでいる。
流行りのファッション誌や漫画の雑誌ではなく、なぜか文芸誌が目立つ位置に置かれている。店主の趣味だろうか。

「俳句……」

どうやらこの号では俳句特集が組まれているらしかった。
僕でも知っている昔の俳諧師の名前が並んでいる。

そういえば母は俳句が好きだったらしい。遺品の中に学生時代に自分たちで作った本があった。
僕の名前が「曽良」なのは俳句好きから来ているのだろうか。
その曽良、いや、曾良についても少しだけ書かれていた。

「……曾良、長崎の壱岐で死す、か」

もしや長崎繋がりでこの号を目立つ位置に置いたのだろうか。曾良について書かれた本を。
いや、たまたまか。ここは長崎市だ。


読み進めていると、新たに客が入ってきた。
僕以外いなくて静かだった店に、ガラガラという音と足音が響く。

「おじさん、久々に来たよー! ってあれ。また奥にいるのかな」

僕より一回りありそうな男の人だ。くたびれたスーツと茶色いネクタイ。手には大きめの鞄があった。


「おや、若いお客さんだ。珍しいな。こんにちは!」

知らない男が馴れ馴れしく声をかけてくる。
あまり関わりたくないので聞こえなかったふりをしておく。

「あ、もしかして修学旅行? 
いいねぇ、学生さんは。まあ私も行くときあるけどさー」

無視されたことを気にせずに一人で話し始めた。話すのが好きな人らしい。

「おお、俳句特集やってる! 買って帰ろうかな。君、俳句好きなの?」

どうやら俳句好きな人らしい。
どうするか。答えるべきか。

「読んでるってことは好きってことだよね。私もだよ!」

勝手に決めつけないでほしい。さすがにイラっとしてきたので無視するのをやめた。


「勝手に決めないでください。あと、うるさいです」

2017/05/22(Mon) 15:15

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