ひとりごと

妄想や書きかけの文など。腐向け注意
◆パラレル番外編:従者と魔法使い 

人形シリーズ(パラレル)のさらにパラレル。従者柳と魔法使い仁王の話。
・・・・

[marionette-0]


昔々、ある時代のある国の話。

大きなお城から遠く離れた森の中に、魔法使いの家があったそうな。

コン コン コン

その家を一人の男が訪ねたんだと。

「魔法使いよ、ここにいるのだろう?緊急事態だ、出てきてくれ!」

扉をノックした男はこの国の王子の従者。
城内外の者から魔法使いの話を聞いてここまで歩いてやってきた。
綺麗に手入れされた服は今や土埃や尖った草木で、すっかりボロボロになっておった。


従者の呼びかけのせいで、昼寝をしていた魔法使いは目を覚ます。
欠伸をして身体を伸ばして、よっこらしょ、と寝床から出た。

「せっかく寝とったのに、うるさい奴じゃな…」

銀色の髪の毛を手櫛で解いて紐でまとめて、魔法使いの男はようやく扉を開けたんじゃと。


「ふわぁ〜…なんじゃ、城のお役人さんか。ここはお前さんみたいなもんが来る所じゃないぜよ。帰った、帰った!」

魔法使いは手を振って追い払おうとしたんじゃが、従者はちっとも帰ろうとせんかった。

「お前が城嫌いなのは知っているが…王子が大変なことになった。頼みたいことがある。報酬はいくらでも用意しよう」

従者があんまりにも真剣なもんで、魔法使いもただごとではないと思ったらしい。

「…王子って、あのごついゴリラみたいな男らしい男じゃろ。魔法使いの俺に頼むことと言ったら呪いをかけるか呪いを解くか…あの王子に呪いでもかかったんか?」
「さすがに察しがいいな、魔法使いは…その通りだ」
「で、その報酬とやらは口止め料も入っとるんじゃろ?金には困っとらんから、別のものにしてくれんか」
「変身魔法の材料だな。手配しておこう」

従者も魔法使いも頭のいい男だったもんで、初対面とは思えんほど話はあっさり進んだもんじゃ。
似た者同士だったのかもしれん。


「で、今から城に行かんといけんのか?かったるいの〜」
「…いや、その必要はない」

冷静な表情から苦しみの表情へと変わった従者は、背負っていた鞄から何かを取り出した。

「王子は…ここにいる」

鞄から出してきたのは、黒くて大きい箱。赤ん坊が入るか入らないかくらいの大きさじゃった。

「お前さん、いくらなんでもそれはないぜよ…」

魔法使いは呆れた様子で従者を見たが、従者は何も言わずに魔法使いに箱を差し出す。

しょうがないので魔法使いも何も言わずに、箱の蓋を開けたんじゃ。


箱の底には柔らかそうな布が敷き詰められている。その中に入っていたのは

「…こいつは厄介じゃな」

気品のある服を身に纏う、「ごついゴリラみたいな男らしい男」…紛れもない、この国の王子様。

そいつが目を開けたまま動かない状態で、箱の中で横たわっておった。


まるで、人形のように。


・・・・
昔話っぽい口調にしてみました。
柳も仁王も賢いと思ってるのでこんな会話に。魔法使い仁王はイリュージョンも魔法でやってるんだと思います。
「シンデレラ」に出てくる魔法使いはあくまでもシンデレラの味方であって、国や王子の味方ではないと思ってます。でも悪い魔法使いじゃないです。

2014/09/28(Sun) 11:50

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