日和

□短編集
52ページ/79ページ


彼に怖いものはあるんだろうか。
私は怖いものだらけだよ。


 怖がらないで下さい
 泣かないで、下さい


静かに泣いている師匠に、少し若い弟子が淡々と話し続ける。
果たして聞いているのか聞いていないのか。


 こっち向いて下さい、いいかげんに


無理矢理に顔を自分の方に向けて、キッと睨みつけた。


 怖がるのも、悲しむのも…僕にだけ、すればいい

 もっと怖がって下さい
 もっと泣いてて下さい


…それは、恐怖の独占欲。


[怖いもの知らず]

end.
→後書き
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ