日和

□短編集
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『…さん』

『…芭蕉さん!』

あれ、曽良君の声が聴こえる。

おかしいなぁ、ここにいるはずないのに。
私また何かやらかしたのかな?怒ってるような…


「…曽良君?」
「違います。こんな骸骨の人いるわけないじゃないですか」
「そうだよね……骸骨!??ギャーーお化けーーー!??曽良君がお化けになったーー!!」
「落ち着いてください、ある意味あなたもお化けです」
「あ、そっか。私死んだんだった…足が透けてる!?ウワァーー!!」


[死んだ私とマーフィー君と手紙]


「落ち着いてください、あんまり騒ぐと罪重くなりますよ」
「だ、断罪チョップ!?」
「いや、チョップはしませんが…とにかく、私は大坂担当の死神で、あなたをあの世に連れていくのが仕事です。いい加減仕事させてください」
「ごめんなさい…死神!?」
「死神ですが騒がないでくださいね」
「う、うん…」


「というわけで、旅行中に病気で亡くなった松尾芭蕉さんですね」
「…はい」
「落ち着きましたか?」
「落ち着いたというか…やっと自分の死を受け入れたというか…そんな感じかな」
「それはよかった。じゃ、今からあの世へご案内致しますので…」
「うん、そうだね…行かなきゃね」

「あ!ちょっと待った!」
「はい?」
「マーフィー君がいない!」
「マーフィー君?ああ、お気に入りのぬいぐるみのことですか?残念ながら、現世の荷物は持ち込めない決まりになってまして…」
「マーフィー君は荷物じゃないよ、親友だよ!…どうしてもダメ?」
「……」
「あの子残したままだと曽良君に処分されちゃうよ!どうにかならない?できないなら私あの世に行かないよ!君なんて上司に怒られちゃえばいいんだ!」
「…面倒な人だなぁ。そんなこと言ったらホントに罪重くなるかもしれませんよ」
「そんなの君が決めることじゃないでしょ?」
「それもそうですね…どうにかできたら、ちゃんとあの世に逝きますか?」
「もちろん!どうにかできるの?」

「…あなたの棺桶に一緒に入れてもらうか、墓に供えてもらえば、あの世に届きますよ」
「あ、要するにお供え物か!なるほど……供えてくれるかな」
「遺書には書いてないんですか?」
「普通に一緒に連れていけると思ってたから…」
「それじゃ難しいですね。諦めて逝きましょう」
「うぅ…マーフィー君……さよなら…」


「あ!ちょっと待った!」
「またですか。今度は待ちませんよ」
「もう少しだけ!今から曽良君に手紙書けないかな?『マーフィー君を供えて欲しい』って伝えなきゃ」
「…やれやれ、よくいるんだよなこういうのが」

「この身体じゃ筆が掴めないみたいだから、ちょっとだけ生き返らせて!」
「ほんとにちょっとだけですか?」
「うん!10分頂戴!」
「時間指定しやがった…まあいいですよ」
「え、ほんとにそんな力あったんだ、ダメ元で言ったのに…まあいいや、よっしゃー!」

「今日のこの地区の死者はあなただけだから、実はそこまで忙しくないのです。でも、出来るだけ早めにお願いしますね」
「ありがとう!」


ぐたぐだに終わる。
→後書き
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