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□テニスの王子様
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[瞳の色は]


「夜のような瞳だな」

練習中、日差しが苦手で目を閉じて過ごしているこの柳蓮二に対して、中学からの友人に言われた言葉。
どういうつもりで言ったのか、最初はよく分からなかったのだが。

「俺は蓮二が良いならそれでいいと思う。日常生活やテニスに影響がないのならば。しかし…その瞳を気に入っている奴がいることも忘れないでほしい」

そう言われて初めて、先ほどの言葉が褒め言葉だったことに気づいた。

日差しが苦手だからと言って、夜になったら常に開眼しているわけではないし、昼間でも開けるときは開けるのだが。
お前が『夜』と言うのなら、このまま夜のふりをしてもいいかもしれない。
と、少々おかしなことを考えてみる。

「ありがとう、弦一郎」
「礼を言われるほどではない」
「この瞳をそこまで気に入ってもらえているとは思わなかった。嬉しいから、礼を言ったんだ」
「そうか…言っておくが、嬉しいからと言ってずっと開けていてほしいわけではないぞ。昼間は無理をして開けなくてもいい」
「フッ…お前がそう言うなら、これからもそうすることにしよう」

機嫌が良い俺を不思議そうに見やる友人の瞳は、夜になる前の色をしていた。

何度も"見ている"それは、今はとても綺麗で眩しいと感じる。

と言ったら「たわけが!」と照れ隠しに返す確率、95%…
だからこのことは、自分の胸だけにしまっておこうと思う。

「む…どうした、蓮二。俺の顔に何かついているのか?」
「強いて言うなら汗と土埃くらいだが、問題無いだろう」
「確かに問題無いが…それならば、こちらを見つめる必要も無いだろう。何か言いたいことでもあるのか?」
「目を閉じているのだから、見つめているわけがないだろう。よって、その質問は無意味だ」
「先ほどからその意味の無いことをしているのは蓮二、お前の方だろう」
「意味が無いことをしてはいけないのか?人間、余裕も必要だと俺のデータにある」
「いや、そこまでは言っていないが…」

密かにじっと"見つめて"しまっていたことを誤魔化すために無意味かつ矛盾を含む問答を続ける俺と少々押され気味な弦一郎に対して、我が立海テニス部部長の呆れた怒号がコートに響き…練習が再開されたのであった。


end.
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