日和

□アゲハ蝶と銀杏の葉
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月に照らされた蝶は居なくなり

今見えるのは…

   イチョウ
[師と銀杏]



 上を見れば青色
 横を見れば黄色
 下を見れば茶色

ここは銀杏並木の道


 始めは緑で
 それから黄色で
 今はくすんだ色

目の前には銀杏の葉



時雨忌などといいながら
今は澄み切った空の色
彼は残念に思うだろうか


秋のアゲハは模様を失って、
今は地面に染まっている。


「見せたがってたアゲハはコレですか?
 …ひどい話ですね。」

僕は地面に話かける。
正確には、
地面の上の石の下に。

「ちゃんと捕まえておけばよかったのに…逢えただけで満足して。
 (あなたに逢えた、それだけでよかった…でも)
 だから芭蕉さんはダメなんですよ。
 (愛されたいと願った僕は
 ダメな弟子でしょうか)」


僕は銀杏が嫌いになった。
見る度に思い出すからだ。

緑の着物に短い茶髪
色のくすんだ縫い包み
今は地面に染まって

もう、    

「次に逢うときは、ちゃんと捕まえておきなさい。
 (今はもう、手遅れですけど)
 言っておきますが、僕は手伝いませんよ。
 (僕は、あなたを―)

 …それでは、」



地面の葉など見たくない

黄色が全て無くなって
青色だけ見えても意味がない


だからここに来るのは
一年の内の今日だけにしよう。


それ以外は
前だけ向いて歩きたいから。


「また逢いましょう。
 (いつか、必ず)」



end.
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