novel(永遠の部屋)
□夢現 番外
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【幹人と透のクリスマス】
「そんじゃー、取り敢えず聖なる夜に乾杯っ!」
「乾杯っ」
二人のグラスが軽くぶつかって、心地いい音を奏でる。
―――しつこいようですが、未成年の飲酒は法律で禁止されています―――
何がめでたいわけでもないのに、二人はいたくご機嫌だった。
「んー、美味いっ。さすが透の家のモンだよなー!」
「そーだろそーだろっ、ほら、もっと飲む!」
「うわっと、止めろよ馬鹿…いただきますっ」
こんなノリで、どんどん飲み進めていくものだから、十数分と経たない内に、幹人の酔いは完全に回ってきていた。
呂律の回らない舌で、ふわふわとまとまらない言葉を楽しそうに紡ぐ。
「ふぁー。とーおるー、キリスト、万歳だよなぁー?」
「え?うん、まぁな。もとは彼の生誕、うわっ、ひっつくな!」
透の抵抗もお構いなしに、幹人はその首に手を回す。
これで透がもう少し女らしければ、いい雰囲気のカップルだと納得もできるのだが…
ご存知の通り、二人は恋愛関係にない。
おまけに透は男も頭が下がるほどに男らしい。
皆さんも想像してみてほしい。
クリスマスに、ロマンティックな聖なる夜に。
そんな人間が二人、酒を飲みながら絡み合っていたら…
「寒いんだよ馬鹿野郎!いや、暑苦しいんだけども!とにかく離れろ、酒臭いっ!」
「飲ましたのはー、おまえだろー?なー、とおるー?」
「うわぁ!…ったく!親友にも許容範囲ってもんがっ、なんでこんな時に限って力が強い!?畜生っ…
キリスト万歳ー!!」
運悪く其処で扉を開けた遥が、固まったのは言うまでもない。
抱きつかれながら、キリスト万歳。
嗚呼、我が妹よ。いつからキリスト信者になった。
嗚呼、我が妹よ。それは不純同姓交友と取ってもかまわないのか。
ついに狂ってしまった。
カムバック・平和な日常。
カールさせた髪を夜闇になびかせながら、ふわふわスカートは走り去って行った。