++頂き物++
□frantic(RK)
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数ヶ月に及ぶ長い長いツアーが今日で終わりを迎えた。
自分達を成長させるのは対外的な活動は勿論、新しい音源の製作でもなく。
やっぱり生で演奏を、声を、気持ちを、俺達を大切に思ってくれている奴らに伝えられるライヴなんだと実感する。
ボイストレーニングなんかしなくても俺の想いは伝わるんじゃないか、と思うのもステージに立っている時だ。
ロクに家に帰れず、慣れないホテルのベッドの所為で溜まった疲労もやっぱりステージの上だと忘れられる。
ファンだけじゃなく俺達にとっても特別。
正直「仕事は好きか?」と聞かれたら易々とイエスとは答えられないが「ライブは好きか?」と聞かれたら即答で首を縦に振る。
今日のライヴも最高だった。
まだまだ「通過点」だけど、次の課題も見つけられた、そう言った意味でもいいライヴだった。
満身創痍で楽屋に戻ってきたメンバーもスタッフも皆、晴れ晴れとした表情。
嬉々とした笑い声。
溢れる笑顔。
こんな日ばかりは酒が強かったら良かったと思ったりする。
単純に気持ちが良さそうだし、アルコールが好きなスタッフに付き合ってやりたいとも思うから。
「ちょっとトイレ〜」
皆、私服に着替えるのも億劫でステージ衣装のまま今日のライヴ中のこぼれ話を遮って席を立つ。
廊下でもすれ違う多くの仲間や今日のライヴを取り上げてくれる各メディアのスタッフに称賛されて気分も上々。
俺達のいる楽屋から一番近い洗面所に着き、わりと薄い扉を開けようとノブを手にした瞬間。
中から聞こえてくる、声。
「ガゼットねぇー・・・良いんだけどさぁー・・・」
その声色は明らかに俺達を見下していて、次に続く言葉は喜ばしいものではないと容易に分かる。
この業界の人間、ファン、インターネット・・・批判される場所なんて様々で、悲しい事にソレに慣れてしまった自分も居たりして。
愛ある批判に耳は貸すけど、それ以外は気にしない。
聞いてないフリしてやって、嫌味たっぷりの笑顔でも振りまきながら。
中に入ろうかとした、その時。
再び耳に入ってきた、声。
「やっぱり日本のヴィジュアル界はディルアングレイで終わりかなー。あとはどれも二番煎じ、みたいな?」