□asceticism
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痛い気持ちも辛い現実も
苦しいだけの呼吸も、全て



asceticism



「っ、この、アホがっ!」

言って振り上げられた拳は流鬼の頭を鈍く響かせた。
既に床に転んだ視線はそれ以上沈む事などもなく、ただボールの様に跳ねた。

「なんや、死ぬんか。そか…やっぱお前も僕を置いてくんや」

血にまみれた拳を胸に抱くように小さく体を縮ませて震えた京に、流鬼は重い瞼を開ける。
少し動けば視界は赤く霞んで、体が思う様に動かない。

「きょ…さ、ん…お、れ…大丈…夫」

何処をどう見ても大丈夫じゃないであろう俺はそれだけ言って、京さんの床に晒された足の指先に触れた。
その手に京さんは一度怯えた様に震えて、泣きそうに笑って俺の手を握った。

「良かった…流鬼だけ、流鬼だけは…僕を一人にせんとってな…」

血まみれた手で、同じく血にまみれた俺の手を愛おしそうに包んで頬を寄せる京さん。
その温かさに、あぁ、まだ俺生きてる、なんて感動してみたり。

生きる事も、目の前の現実も、全て辛いですよね。
それでも、俺は貴方の為に生きている。








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