落書き帳2
□深理(L編)
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初めて彼を見たのはファイルにあった学生証の写真だった。
女性が喜びそうな器量で清潔感にあふれ、おそよ犯罪に走るような印象を持たせない顔立ち。
しかし、幼さを残しながらも意志の強そうな瞳に目が留まった。
モニターで見た彼は、ファイルで見るよりも成長し、少し大人びていた。
私の頭の中でプロファイルに新たな項目が追加される。
思ったとおりの行動を見せるモニターを凝視する。
これだけカメラを設置しているのに一度もカメラと視線が合わない。
盗撮はバレているかもしれない…。
そんな気がした。
一週間、彼の生活を見続け、もっと身近で彼のことを知りたいと思うようになった。
それは単に捜査線上に浮かんだ容疑者として、だ。
センター試験の会場で私は彼をずっと見ていた。
一筋縄ではいかない種類の人間だということが分かった。
こうゆう相手には先手必勝。
先を越されるとやっかいなことになる。
自分のペースに持ち込まなければ…
私の頭の中では彼がキラであると確定していた。
証拠を得るための接近だった。
しかし、不謹慎ながら彼とのトークは私を楽しませた。
身を晒したことにより命の危険は増したというのに、彼との対話は刺激的で、
なにより私自身の頭がよりクリアになり研ぎ澄まされていった。