PKSP
□愛し君へ12
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巻き込まれたら
抗うことは意味がない。
「勝者、ジムリーダー!」
高々に宣告され、カイリキーが誇らしげな顔をしてグリーンの元に帰ってきた。
「いやあ、参りました。」
よくやった、と声を掛けてボールにカイリキーを戻していると、対戦相手に話しかけられた。
「そちらのポケモンも、かなり鍛えられていますね。」
素直にそう返した。聞きようによっては厭味ともとれる言葉だが、相手はそうは捉えなかったらしい。相手の年齢が十歳以上上であることも関係しているのかもしれない。どこか照れ臭そうな笑顔を見せた。
「いやぁ、私なんてまだまだ。・・・。」
「?どうしました?」
急にまじまじと見られ、居心地が悪い。
「!ああ、すみません。昔見た人に、貴方がよく似ていたもので。」
「昔見た人?」
オウム返しに呟くと、男性は恥ずかしそうに続けた。
「はい、もう二十年以上前の話なんですけどね。私がまだ子どもの頃、ここのジムによく来る女の子と男の子がいましてね。その女の子によく似てるな、と。」
「その人、どんなポケモン連れてました?」
「え?ええと・・・確かオオタチとプクリンを連れていましたね。」
・・・母さんかもしれない。
グリーンと母親はよく似ている。瞳の色や髪の色はもちろん、容姿や雰囲気も似ているらしい。
それにしてもやたら詳しく覚えてるな、この人。母さんのこと、好きだったんだろうか?
「それ、たぶん母です。」
「お母さんですか。どおりでそっくりなはずですね。」
男性が懐かしむように目を細めた。
「綺麗な女性(ひと)でしたからね。実は私の初恋の相手なんですよ。・・・告白はしませんでしたがね。男の子も目立つ子でしてね、銀髪に赤い瞳をしていて。」
「珍しいですね。」
心当たりがない。銀髪だなんて、染めていたのでなければ、すぐに誰だか解るのではないだろうか。
赤い瞳、とはどれくらいなのだろう。
反射的にレッドを思い出したが、あんなに明るい色はめったにない。赤褐色、くらいだろうか。
「男の子の方は顔ははっきりとは覚えていませんが、瞳が明るい赤で、珍しいな、と思ったんですよ。」
赤褐色じゃないのか。ますます珍しい。