PKSP
□愛し君へ10
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真実を知って、なお・・・
受け入れて、くれますか・・・?
レッドが自宅で蹲り、グリーンがマサキ宅を訪れた同時刻。
ブルーはタマムシシティに訪れていた。賑やかな中心地に背を向け、郊外へと向かう。
「ここ、よね?」
ひっそりと建つ一軒家の前で、ブルーは立ち止まった。
「タマムシ大学の名誉教授の家の割には、随分とひっそりと建ってるのね・・・。」
そう呟き、呼び鈴(今時、インターホンではなく呼び鈴だ!)を鳴らした。
暫くして、三十代後半の女性が顔を出した。
「何か・・・?」
「あの、私、ブルーと言います。シラナギ教授のことで、」
「父の居場所を知っているんですか!?」
ブルーの言葉を止めて、女性が半ば叫ぶように尋ねた。あまりの剣幕に、思わずたじろいてしまう。
「い、いえ、そういう訳では・・・。」
「そうですか・・・。急にごめんなさいね。どうぞ上がってください。」
女性は明らかにがっかりとした様子だったが、すぐに取り繕うように早口でそう捲し立てると、家の中へと案内した。
何だか雲行きが怪しいわね・・・。
言いようのない不安を感じながらも、ブルーはその後に続いた。
シラナギ教授。タマムシ大学の名誉教授であり、ポケモンの研究、特に医学に詳しい人物であり、自らも獣医である。
非常に温厚で温かみ溢れる人格者で、たとえ他所でもう助からないと言われたポケモンであっても、絶対に諦めなかっただとか、所持金のほとんどないトレーナーであっても、決して断らなかっただとか、彼を称える話はいくらでもある。
ブルーが彼を尋ねたのは、今回の奇病とされた――警察は真実を隠すつもりらしい――子どもの異常について、何かヒントが得られるかもしれないと踏んだためである。
・・・まさか、行方不明になってるだなんて思いもしなかったけどね。
訊けば、十年前から行方が分からないのだそうだ。
「捜索願いは?」
「いえ・・・」
「出してないんですか!?どうして!?」
思わず非難めいた声が出る。
「どうして、って・・・世間、そう、世間様の目もありますし、それに、・・・。」
どうも怪しい。
ブルーは目を細めた。先程の焦りようからして、心配しているのは本当だろうに・・・。
「・・・もし、お帰りになられたら、連絡して戴けませんか?」
「あ、はい。必ずご連絡致します。」
とりあえずは、退こう。
そう思い、連絡先を書こうと手帳を開いた。