PKSP

□愛し君へ2
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優しい、暖かい記憶。



もう二度と取り戻せないけど・・・・・・






















洗濯物を干しながら、レッドは目を細めて自分のポケモン達を見つめた。



久しぶりに帰って来たマサラの空気はやはり澄んでいて、何処か心を安らげてくれる。彼らにとってもそうなのだろう。何時も以上に生き生きとしている。



彼が自宅にいる時は、大抵ポケモン達はボールから出し、自由にさせている。



梅雨も終わり、本格的な夏が始まった今の季節は、昼寝をするには少々暑すぎるが、それでも、さんさんと降り注ぐ太陽の光は気持ちがいい。



自分の生まれた季節だからか、レッドは夏が好きだ。



暑さが気にならないわけではないが、夏特有の爽やかさや、元気な木々、生き生きとした子供達、それら全てが、レッドにとっては好ましい。



暑さが苦手な親友からすると、夏は「困ったひと」なのだそうだ。イマイチよく解らないコメントだが、ニュアンスは解らんでもない。



そんな夏の日差しを浴びながら遊んでいたピカチュウが、ふいにこちらにやってきた。



「? どうした、ピカ?」



ピカチュウは主人の前で自分の腹部を撫でてみせる。続いて、何処か哀れっぽい声を出した。



お腹が空いたのだろう。



庭に生えている木の実や果物は、勝手に食べてもいいことにしているが、それだけでは、流石に腹は膨れないだろう。



時計を見ると、12時30分を過ぎていた。



「あぁ、ごめん。すぐに用意するよ。」



そう言って微笑むと、嬉しそうに尻尾を振って返事をする。



だらけた生活を嫌うレッドがどうしても疎かにしがちなもの、それは食事だった。



料理自体は嫌いではないのだが、食べるのがどうせ自分一人かと思うと、つい一食抜いてしまうのだ。



もっとも、それを自覚しているからこそ、できる限り三食作っているのだが。



ただでさえ華奢な体躯は、ハードな旅には不向きなのだ。自らの体調管理の為にも、食事はしっかり摂るべきだ。今、そんなに食べたい気分ではないが、致し方ない。



そもそもレッドが『食べたい気分』になることなど滅多になく、それ故に苦労しているのだが。
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