PKSP
□愛し君へ1
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夢を見た。
幼い頃の夢だった。
村のはずれが真っ赤で、誰かが叫んでいて。
幼い自分を母が抱き上げた所で目が覚めた。
「あんた、目、覚めてる?」
母に呆れたようにそう聞かれ、グリーンは思考を中断した。
返事をしない息子に痺れを切らしたのか、彼女はため息をひとつ吐いて、目の前に牛乳の入ったグラスを乱暴に置いた。
「和食に牛乳?」
思わずそう呟くと、文句言うな、さっさと食ってしまえと返された。
「ぐちゃぐちゃ、なのに・・・・」
ふと父と目が合う。彼は、苦笑をしながら、茶の入ったグラスを渡してくれた。
ありがとう、と礼を言って受け取りながら、先程から考えていた夢について聞いてみた。
「10年くらい前、火事、あった?」
「ああ、あったけど・・・覚えてるのかい?まだ小さかったのに」
父は不思議そうにしながらも、肯定した。
夢で見た、と返すと、納得したように頷き、
「ずいぶんひどい火事だったよ。未だに原因も不明だし」
「不明?」
その一言が妙に気になる。
「そう、不明。調べようにも何もかもが燃えてしまっていて、お手上げだったからね。」
さあもう行かなくちゃ、そう行って父が席を立つと同時に、まだ食べてんの、という母の声が聞こえた。
「ジムは?」
「今日、休館日。」
「・・・いい御身分ねぇぇ、あんた」
「今日、急ぐの?」
「そ、あんたは出掛けるの?」
「たぶん。」
「行く前に外のコ達にご飯やってね。今日はお父さんもアタシも遅いから、ご飯は何とかしてね。でも料理はしないでよ、あんたがやったら大惨事になるから。じゃ、ね。」
言いたいだけ言って、母は慌しく
行ってしまった。
目の前の玉子焼きを食べた。殻が入っている。
・・・人のこと言えるほど料理上手くないだろ、と思った。
マイペースなグリーンは、まだ半分も食べられていない。
「・・・・・・飽きた。」
一体、朝食を摂るだけで『何に』飽きたのか、ツッコむ者はいなかった。