Treasure

□僕らの日常
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閉じられた世界の中で、唯一の希望――クリスタルを探し求めながら、カオスの手下やイミテーションと戦い続ける戦士たち。

時に立ち止まり、時に支えあいながらも困難をくぐり抜けてきた彼らは、今、大きな危機に面していた。


「ど、どこ行った!?」

「さっきあっちにいったぞ!!」

「あっ今そこ通りすぎたよ!!」


片手に丸めた紙を持ちつつ、じりじりとにじりよる彼らの間に、緊張がはしる。
いつその黒光りする羽を伸ばして飛んでくるやも知れない。
そう思っての緊張だったが、意に反してそいつはふてぶてしくも壁と壁の間に居座ったまんまだった。


「つーかこの世界にゴ●ブリなんていたんスね……」

「お前!Gって呼べよ!!実名を出すな!!」

「実名って何だよ!?人か!!」


ティーダとバッツは目を例の黒色から離さないまま言い合った。
ちなみに、ティナは全員一致の「かわいそうだ」という意見により、既にここから避難している。
つまりここにいるのは、ティナと、あたりを哨戒しているクラウド・スコール、さらに仮眠をとっているライトを除く全員というわけだ。


「……って、何でこれだけゴキブリ一匹退治できないんだ、俺たち」

「じゃあ、いくか?フリオ」

「……遠慮しとくよ」


若干顔を引きつらせながら後ずさるフリオニール。
またも膠着状態に陥るかと思われたその時、ジタンが名案を思い付いた!とばかりに身を乗り出した。


「なぁなぁ、今こうやってどっちもそっちもいかなくなってんのはさ」

「それを言うならにっちもさっちも、だよ」

「んなこたいーって!それより、つまりみんなアイツに触りたくねーってことだよな?」

「まぁ、そうっスね」

「なら、触らずに駆逐すりゃいーんだよ!」


それって一体?と首をかしげるティーダに、バッツがああ!と手を打った。


「つまり、魔法攻撃でどーんとやっつけりゃいいってこったな!」

「そういうこと!なーんだバッツ、今日冴えてんじゃねーか」

「まーな!」


へへんと誇らしげに笑うバッツ。
そういう行動が彼を一層子供に見せているというのを、彼は知らない。


「それじゃあ、僕の出番だね。魔法なら任せてよ」

「そっか!オニオンなら魔法の力も加減出来るし、ちょうどいいっスね!」


賢者のジョブにチェンジしたオニオンが一歩前に出る。


「き、気を付けろよ」

「だーいじょうぶだって。僕を誰だと思ってるのさ」


言いながら、手の中に炎の球をうみだしていき、あたりに熱気が満ちる。
やがて温度差から気流が乱れ、ついには髪が暴れまわるくらいに風が吹き荒れ始めた。


「こ、これは……!」

「いくよ……それっ!!『ファイガ』!!」


オニオンの手の中で十分成長した炎の球が放たれる。
それは狙い違わずゴキブリに命中し――そしてあたりを吹き飛ばした。


「………………え」

「ちょ………………」

「……やり過ぎだぁぁぁぁあ!!!!!!」


あたりに悲痛な叫びが木霊する。
時既に遅し。
自分たちのテントやら何やらは、全て見るも無惨な姿へと変貌してしまっていた。


「ちょっ、オニオンんんん!!!!」

「ご、ごめん!!あのテカる黒色見てたらつい……!!」

「ど、どうする!?こんなことみんなに知れたら……!!」


「何の騒ぎだ、皆!!!?」

「「「「「「!!!!!!」」」」」」


背後から聞こえた光の勇者の声に、その場にいた全員が冷や汗を流す。
ヤバい。怒られる。
奇跡的にも瞬時に全く同じ思いを浮かべた6人は、これまた奇跡的にも全く同時に、脱兎のごとく逃げ出した。


「な…………こ、これは……待て!!どういうことか説明してもらうぞ!!」

「うわわわわ、追ってきた!!」


背後から聞こえてくる罵声に、一同は更にスピードを上げる。

イミテーションと戦う時よりも更に速く走る彼らに、勇者がシャイニングウェーブをくらわせるまで、あと――――。
そして、哨戒から帰ってきたスコールとクラウドが目眩を起こすまで、あと――――。


End...
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