PKSP3
□愛し君へ37
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後は、もう少し頑張るだけ。
しかし、迷路のようなビルだとグリーンは思う。
(どうして、迷路、したいの?)
いい加減敵の数も減り、ただひたすらレッドを捜してウロウロするばかりでは、そんなくだらないことに考えが及んでしまう。
(何で、こんな、見つからないのかな?)
何度も立ち止まり、戸惑うように大きな耳を動かせるエーフィの様子から、彼が一箇所に留まっている訳ではないことは解っている。
(逃げて、いろいろ、してる、とか?)
まさかねぇ、と思いながらも、エーフィを追う。
その時、急にエーフィの足が止まった。耳と尾がピンと立っている。
「ブイ?どうしたの?」
突如足を止めたにも関わらず、エーフィには警戒している様子はない。
(・・・・・・もしかして・・・・!)
エーフィが警戒しない相手なぞ、今この状況では、一人しかいない。
「・・・・・レッド!」
「え?うわっ!」
角から突然現れたグリーンに、レッドの瞳が丸くなる。彼からすれば、全くの不意打ちだったのだろう。
「え!?グリーン!?もう此処来たの!?ていうか、怪我してない!?ああもう、しかも、何で一人なワケ!?」
「レッド、落ち着いて」
「落ち着けるワケないでしょ!?」
レッド自身も傷を負っているが、これだけ大声を上げているところを見ると、案外元気そうだ。
「ブイ、教えてくれた。怪我、おばさん、戦った。一人、・・・・・走る、しちゃった・・・・・」
そういえば、誰も追い掛けて来ないなぁと思わんでもなかったが、上は上で何かと大変なのだろうと、勝手に納得していた。
「あのねぇ!・・・・・まぁいいや、この際・・・・・」
生憎、此処で彼に根気よく説教する気力も時間もない。飛び付いてきたエーフィの頭を撫でながら、レッドは嘆息一つで、意識を切り替えた。
「あの女幹部は始末したんだよね?」
「うん。・・・・・始末?」
少々物騒な表現に、グリーンは小首を傾げた。レッドはそれに気付かず、眉間に皺を寄せている。
「じゃあ、後はもう一人の幹部とボスか・・・・・できれば、先にピカ見つけたいなぁ・・・・・本っ当に忌々しい奴ら・・・・ん?」
じっと自分を見つめているグリーンに気付き、レッドは瞳をぱちくりさせた。
「なに?」
「ん、レッド、らしい、なった。」
「オレらしい?」
「うん。ずっと、大人しい。今、恐いこと、言う。」
「・・・・・・」
笑顔のまま、中々に失礼なことを言うグリーンに、思わず絶句する。
(でも、確かにそうかも・・・・・)
今回、一人で何とかしようとする余り、随分と間怠っこしい手順を踏んだり、泣きじゃくったりと、弱気過ぎたのかもしれない。
「・・・・・そうだね。ちゃっちゃと潰しちゃおっか!」
沈んでいた心が、漸く浮かんできたような気がして、久々に心から笑った。