PKSP3
□一緒にお茶でもいかがかな?
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パソコンの画面に、文字が次々に浮かんでは消えてる。すぐ終わるかな、と思って始めた作業だけど、そんなに簡単ではない、かもしれない。
家の中で作業をするのも嫌いじゃないけど、お客さんを放っておくのはよくない。「別にいいよ」とは言ってくれたけど、やっぱり気まずいし、勿体ない。
「終わりそう?」
訊きながら、レッドがマグカップを差し出してくれた。勝手知ったるなんとやら、レッドは、うちの台所事情をよく知ってる。俺より詳しいのは、どうかと思うけど。勿論、俺が。
「まだ。結構、複雑。」
レッドがちょっと困ったような顔になって、「また妙なコトしてない?」と言った。
妙なコト?どれを指して言ってるんだろう?ただ、コンピューターウイルスを捕まえて、ついでにデータ見て、面白そうなら、ブルーにあげようかな、と思っただけなんだけど。
「・・・・・・何となく、考えてるコト解るけどさぁ・・・・・」
「レッド、変。」
「表情変にもなるよ。」
今度は、ちょっと呆れた顔。コロコロ表情が変わって、結構面白い。
「め・・・・・」
「だろうね。ハイ。」
結構な時間、パソコンを見てたから、ちょっと瞳が痛い。気付いたレッドが目薬を渡してくれたから、ありがとう、と言って差した。レッドの頭にいたピカが、興味持って俺の膝に来たけど、コレ、滲みる奴だからダメだよ。
何となく、やる気がなくなって、ピカの頭から尻尾まで、順番に撫でてみる。そういえば、ハッサム、何処行ったんだろう?外で遊んでる?珍しい。
「グリーン相手には、こんなに大人しいのにねぇ・・・・・」
向かいのソファから見てたレッドは、ちょっと呆れてる。違うか、上手く言えないけど・・・・困ったと、ほのぼのと、混ざった感じ。
「ていうか、グリーン、飽きたんだ。」
バレてる。別に、内緒じゃないけど。だって、案外面白くなかったんだ。頑張ったら、俺でも作れそうなレベルだったし。
「じゃ、ちゃっちゃと消しちゃえば?」
「消す・・・・・無理。」
「はぁ?何で?」
凄い怪訝な顔。言っとくけど、コレ作ったの俺じゃないよ?
「捕まえるだけ。消すは、できない。」
「・・・・・・つまり、このパソコンはウイルスバスターにも関わらず、消去すらできない馬鹿丸出しなソフトしか入ってない、と?」
頷くと、ぎゅっと眉間に皺が寄った。文句は、友達に言って。正直、あんまりいらないの、押し付けられたんだから。
「どうせ押し付けられたんだろうね・・・・・捨てちゃえば?」
レッドがニッコリ笑って言った。捨てるのは、この変なソフトなのか、彼との友人関係なのか、どっちだろう?レッド、たまにえげつないこと言うから。
「・・・・・何か失礼なコト、考えてない?」
「捨てるの、ソフト?あいつ?」
「ソフトだよ!オレのこと、どんだけ性格悪いと思ってんの!?」
ちょっと怒らせちゃったらしい。いろいろ、表情見れて楽しい。
「ごめんね。」
「・・・・・絶対悪いと思ってないよねぇ?」
まあ、いいけどって、レッドが溜息吐いた。ピカが、どうしたの、って見上げたから、何でもないよ、って握手した。
「で、もういいの?」
「うん。飽きた。」
頷くと、レッドは小さく笑った。こういう、無邪気に笑うレッドは、可愛いと思う。たまに、何だか笑ってても恐いけど。
「じゃ、ゆっくりしよっか。」
そう言って、レッドはまた笑う。何だか楽しくて、俺も釣られたみたいに笑った。
End.