PKSP3
□パステルカラーの使い道
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本日は今年一番の大寒波、という天気予報は大当たりらしい。比較的温暖なマサラも、今日は雪が積もるほど降っている。そのうえ、風までびゅうびゅうと吹いているのだ。外に出る気には、到底なれない。
「・・・・旅に行きたいわね」
暖房の効いた室内でミルクティーを口にしながら、ふいにブルーが呟いた。あまりに急で反応を返せなかった面々の中、順応性が高いのか、ただ単にこういう展開に慣れているのか、レッドとグリーンのみは常と変わらない。
「行けば?別に差し迫った用事もないし」
「旅、何処?」
比較的淡泊に返したレッドとは対照的に、グリーンは、まるで自分のことのように楽しそうだ。レッドの反応に唇を尖らせ、グリーンの反応に微笑みながら、ブルーは親友達に指を突き出してみせた。
「アタシが行きたいのは、一人旅じゃないの。ね、3人で旅したら、楽しいと思わない?」
名案だ、と言わんばかりに胸を張るブルーの姿に、ゴールドは少し顔を引き攣らせた。友人に目を向けると、シルバーとクリスタルも、同じような表情をしている。
いくら仲が良かろうと、共に旅をするとなると、誇張なしに四六時中一緒なのだ。ストレスも溜まるし、かえって仲が拗れそうな気がする。
更に視線を巡らせると、エメラルドが二対のキラキラした瞳を向けられている。言わずもがなルビーとサファイアだが、彼らはどうもブルーの言葉に共感しているらしい。じりじりとエメラルドに近寄り、逃げ道を失くしている辺り、結構本気だ。
エメラルドには同情する。流石に誰かと旅は面倒という気持ちが先に立つだろう。・・・・・あの後輩の場合、特に。
先輩はどう返すのか、と視線を戻すと、ブルーが二つの手を掴み・・・・もとい、握っている。
「楽しい、と、思う」
「そうよね!ね、ね?」
「無理じゃん。予定絶対合わないって」
案外冷たいレッドの反応に、不満の声が重なった。彼は特に動じずに、軽く溜息を吐く。
「だって、グリーン、ジムどうすんの?『旅』っていうからには、1日2日の話じゃないだろ?」
話を振られたグリーンは、暫し視線を宙に向け・・・・・
「一週間に、1回、だから、明日、から「それ止めて!マジで!運営が滞るから!」
あと勝手に平均にするな、と突っ込むレッドに、ブルーが首を傾げた。
「それって、流石にレッドの管轄外じゃないの?」
「ホントは、ね・・・・・。言うこと聞かないんだよ、特にカントー(こっち)・・・・・」
どうやら担当者に泣き付かれたらしい。放っておこうにも、その元凶の大半が友人であれば、流石に放置できないのだろう。
「だから、本気で行きたいならさ、まず協会に長期閉館届出しなよ?」
理由は適当にでっちあげてあげるからさ、でも今すぐはヤだ、寒いしと続けたレッドに、2人が思いきり抱き着く。
「や〜ん、だからレッド大好きなのよ〜!」
「俺も、好き。ブルーも」
「アラありがと。アタシも勿論グリーンも好きよ?」
「あーはいはいオレも好きですよ〜」
「「心が篭ってない!」」
なんだかんだで、3人で旅をすることには、レッドも否やはないらしい。
こんだけ普段からベタベタしていて、まだ一緒にいたいか。
ちょっとあの域まではなりたくないなぁと、ゴールドはひそかに考えた。
End.