PKSP3

□羽音に夢を
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頭が痛い。飾り気のない着信音が脳に突き刺さるようだ。



鳴り響く騒音に、レッドは思いきり顔を顰める。携帯電話を開くと、午前9時。やや寝坊気味ではあるが、横になったのが朝日が昇る頃だったのだ。流石にこれくらいは許容範囲だろう。



「・・・・もしもし?」



寝起きであると気付かれないよう、意図して硬い声を出す。おはようございます、とやや申し訳なさそうな挨拶と共に、協力要請の依頼を聞かされた。



(・・・・またか・・・・)



ベッドから起き上がりながら、レッドの表情がより険しくなる。何故、その街で何とかできないのか、と言いたいところだが、ここで放っておけば傷つくのは弱い立場のポケモン達だ。



「了解。じゃ、直接そちらに向かいます。・・・・迎え?いりません。流石にちょっと時間がかかるし、人員を割く余裕はないでしょう?」



こんな若造に頼らなければいけない状況で、体裁もへったくれもあるか、と内心毒を吐く。



「朝っぱらからヤな電話・・・・」



はぁ、と思わず溜息が漏れた。別に依頼自体はごくありふれた内容であったが、レッド自身の体調が芳しくない。できることなら断りたかったが・・・・・無理だろう、と早々に諦める。



「頭、いた・・・・寝不足かな?」



ここのところ、超がつく程の過密スケジュールを熟していたため、かなり疲労が溜まっているようだ。1番辛いのは頭痛だが、熱もあるらしい。



「・・・・ま、さっさと終わらせるか」



ぐ。っと伸びをして、レッドは呟いた。




















「レッド?」



あらぬ方向に視線を彷徨わせているレッドに、グリーンは怪訝な表情を浮かべた。普段は少しながら気の強そうな印象を与えがちな緋い瞳が、今日に限ってはどこか頼りなく見える。



グリーンの呼びかけに応じず、レッドはぼんやりとカップを見つめている。聞こえなかったのか、無視されているのか。向かいに座っているのだから、聞こえないはずがないし、別段喧嘩をしている訳でもなく、無視される謂れもない。



「・・・・レッド!聞いてる!?」

「ふぇ?・・・・え、ああ、何か用?」

「『何か用?』、って・・・・」



・・・・オーキド研究所のソファに座って、『何か用』も何もない。レッドらしからぬ呆けた発言に、思わず口ごもる。



「・・・・用事、あるから、来たん、でしょ?」

「・・・・・そ、だね・・・・・。ごめん・・・・」



良くも悪くもはっきり喋るレッドにしては、妙に煮え切らない口調。どう考えても、今日の彼は様子がおかしい。



「ね、レッド。・・・・・具合、悪い?」

「別に、良くはないけど・・・・・大丈夫だよ」



大丈夫じゃない。全然。



こちらは真剣に心配しているのに、適当にあしらうような言い方に、流石にムッとする。



「でも、ちょっと、変」

「ここのトコ忙しかったから、疲れてんの」



面倒だと言わんばかりのレッドだが、やはり覇気がないし、顔色も悪い。



「疲れてる、なら、お休み、した方が、いい」

「だって、博士に呼ばれたんだもん」

「そんなに、急ぎじゃ、ないよ?」

「オレだって忙しいの!空いてる時間にやっとかなきゃ」



普段のレッドなら、そもそも言及されるような状況は回避するはずだ。



とはいえ、ただでさえ意地っ張りなレッドのこと、そんなことを指摘しようものなら、ますます頑なになることなど、火を見るより明らかだ。



ならば強硬手段をとろうと、グリーンはレッドの両頬に手を添え、軽く上を向かせる。不機嫌そうに顰められている眉に、少しだけ困った表情を浮かべながら、彼の額と己のそれを合わせる。途端に伝わってくる熱に、徐々に表情が険しくなる。



「熱、ある・・・・」

「このくらい、平気だって。この後、別に用事ないし」

「じゃあ、もう、お休み・・・」

「しつこい」



もう終わりだ、とでも言うように、レッドが左手を緩く振る。



「自分の体調管理くらい、自分でできるよ。放っといて」



つっけんどんなその言葉に、



「っ放っとける訳ない!!」



耐え切れなくなってしまった。
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