PKSP3

□シャボン玉を弾く
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「そういえば、ね」



ふと会話が途切れた瞬間、グリーンがふと呟いた。



「小さい時、逢ったこと、ある、って」

「誰と誰が?」

「俺と、レッド」

「・・・・・・うそ」



軽く、明日の天気の話でもしているかのように発せられた予想外な一言に、レッドは思わず固まった。



「嘘、違う。・・・・でも、憶えて、ない」

「オレも・・・・・ていうか、小さい頃のことは殆どぼやけてるけど・・・・」



後半は小声だったが、グリーンには聞こえたらしい。何とも言えない表情に、慌てて笑ってごまかす。



「でも、グリーンも憶えてないの?珍しくない?」

「3歳くらい、だった、から・・・・」



流石に、そんなに幼い頃のことは忘れていてもおかしくはない。



「急に、母さん、言ってきた」



グリーンの言葉に、苦笑いを浮かべる。ウシオ団の一件が解決してから3ヶ月。頃合といえば頃合だが、正直な話、まだレッドには割り切れていない部分も多い。



「・・・・嫌、だった?」

「そうじゃ、ないけど・・・・」



過去にグリーンと逢っているといのならば、興味はある。聞きたい。しかし、その一方で、昔を思い出したくない、というのも本音だ。



「やっぱり、止める?」

「・・・・ううん、聞く。聞きたい」



でも、とレッドはグリーンの手を握る。その手が微かに震えているのを感じ、グリーンは俯くレッドに気づかれぬよう注意しながら、瞳を伏せた。



「・・・・手、握っててくれる?」

「・・・・・うん」



ぎゅっと、己よりも少し小さいレッドの手を包み込む。ホッとした表情を浮かべる彼に、グリーンも柔らかく微笑み返した。



「じゃ、話す、ね」




















小さな手が、卵のつるりとした表面をぺたぺたと叩く。ぺたぺた、がばんばん、になる直前に、血相を変えたユリによって、無事卵は救出された。



「あ〜!」

「あ、じゃない!ばんばんしちゃダメでしょ!?」

「やぁだぁ!」



めっ!と自分を真似て右手を突き出してくる我が子に、大人げないとわかっていても、つい顔が引き攣る。



「『めっ』はママに言っちゃダメでしょ!?」

「ひとの、とっちゃ、め、でしょ?」



3歳ともなると、徐々に言葉数も増えてくる。加えて反抗期なのか、最近では注意するのもひと苦労だ。



「グリーン!ママ怒るよ!?」

「ぱん、だめよ〜。なでなで、しなさい」

「それはお前のポケモンへの対応だろうがぁぁぁ!!」



思わず大声をあげたことにはっとなるが、グリーンは母の怒りなど何処吹く風、ちょうど目の前にいたオオタチを触っている。



「・・・・お前、3歳児相手にキレてどうすんだよ・・・・」



呆れ返ったような声音に、思わずそちらを睨みつける。ややげんなりとしたバーミリオンとくすくす笑うハーライトの間に、ちょこんと座った幼児が見えた。



「・・・・・レッド君はお利口さんだね〜。グリーンもせめてママの横に座ろっか?」

「よそは、よそ。うちは、うち」

「・・・・・・こンのクソガキ・・・・・」



声が低くなったユリに、流石に危機感を感じたのか、ハーライトが立ち上がる。未だオオタチを撫でる、というよりは毛並みを掻き回している幼子に、目線を合わせた。



「グリーン君、今日はお話してくれないのかしら?」

「・・・・たまご、りぃの・・・・」



憮然とした返事に、ハーライトの顔にも苦笑が広がる。どうも、母親に卵を取り上げられたことがまだ尾を引いているらしい。



「って、本人言ってんぞ」

「あの子の好きにさせろって?・・・・ははは、5分で卵割れんぞ?」

「・・・・・マジか」



どうも友人の子どもは、皆のんびりしていそうで、なかなかやんちゃらしい。
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