PKSP3
□見えるモノと見えないコト
1ページ/2ページ
優しそうに見えた。どこか近寄り難い雰囲気の人物が多い中、気さくな人だと、そう感じたからこそ声けたのだ。
・・・・「優しい」ことは優しいのだろう、多分。「気さく」とも、言えなくも、なくもなくもないような・・・・?
「ソレってさ、結局、あるの?ないの?」
「ぉわぁぁ!?」
頭の中でぼんやりと考えていたことに、しかも本人に口を挟まれ、ゴールドは文字通り飛び上がった。
「先輩って、エスパー?」
「全部口から漏れてんだよ、お馬鹿」
呆れたような面白がるような、何とも言えない表情でこちらを見ているレッドに、ゴールドは「さいで・・・・」とだけ返しておいた。無視した後も怖いが、余計なことを言った後もまた怖い。
一ヶ月も共に暮らせば、自ずとお互いの性格も解ってくる。すなわち、「この人に逆らってはいけない」と。
「ていうかさ、優しい人に教えてもらいたかったんなら、オレは多分不向きだよ?優しくて気さくな人がいいなら、あの女の子・・・・クリスだっけ?あの子に頼めばよかったのに」
「げぇ、嫌っスよ!あんなカタブツ!つーか女にバトルの師匠頼むとか!」
「あはは、今度それブルーの前で言ってズタボロにされな?」
笑顔で言われた言葉に、ゴールドは泣きたくなった。きっと師はあっさりバラすのだろう、面白いからだと。
まあ、泣いたところで欝陶しがられるのがオチだが。
「でもさ、オレ多分あの中で一番性格キツイよ?」
「そうなんスか?」
そ、とレッドはぐるりと鍋をかき回した。
「優しいって言うなら、グリーンとイエローかな?ブルーも優しいっちゃ優しいけど、ちょっと解りにくいし」
「あの目つきのキッツイ先輩が?」
意外そうに瞳を瞬かせるが、レッドは薄く笑うだけだった。
「まあ・・・・目つきはね、吊り目だし。でもいい子だよ?電波ちゃんだけど」
「・・・・・イメージ沸かねー」
渡されたカップを持ち直し、ゴールドは唸った。随分とこの先輩方はギャップがあるらしい。
「そうだ、グリーンで思い出した。・・・・ゴー、この間の騒動のコトだけどさ、グリーンとオーキド博士の前であんまり言っちゃ駄目だよ?」
世間話の一環のように言われた言葉に、ゴールドは一瞬唖然とした。
「えっと・・・・ヤナギのことっスか?」
「そ。ソレ」
動揺しているゴールドに比べ、レッドは冷静だった。いや、醒めているのかもしれない。
「何でこのタイミングで?」
「だから忘れてたんだってば」
嘘だ。咄嗟にゴールドは口を掌で覆った。そうしなければ、つい漏れてしまう。
「・・・・・何でか、訊いてもいいっスか?」
「博士とヤナギはさ、友人だっただろ?」
はぐらかす気はないらしく、淡々とした声が耳を打つ。
「で、それはグリーンも知ってる。どういうことか解る?」
「・・・・・何となくは」
それで充分、とレッドは微笑した。
「全く、功績の割に孫には負の遺産ばっかりだよね、博士もさ」
冗談にしても厳しい台詞だったが、ゴールドは何も言わなかった。
自分の気持ちが整理できる頃まで、待ってくれて。
傷付いたであろう友人と恩師が、これ以上哀しまないようにと心を砕いて。
・・・・それでも、自分が反発して孤立することがないよう、敢えて非難される言葉を吐いて。
「先輩は、大切なんスね」
「・・・・・うん、大切だよ?あいつも、お前もね」
全く、「優しくない」なぞ、どの口が言うのか。「解りにくい」のは、一体誰なのか。
「やっぱり、先輩がいいっス」
ぽつり呟いた言葉に、彼は破顔した。
End.