PKSP3

□愛し君へ39
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残るのは、虚無感ばかり。





















『親父』と男が呼びかけたのは、マサキに送った『あの子』と同じ生物だった。





「・・・・・この展開は、ちょっと予想外かも・・・・・・」



レッドがそう呟きながら、一歩後退さった。



生物は、先程の『あの子』よりも一回り大きい。黄色く濁った瞳が、何かを捜すようにギョロギョロと蠢いた。



(何を、捜してる、の・・・・・?)



ぐるりと廻る瞳が、レッドに焦点を合わせた、ように見えた。



刹那。



「「─────っ!?」」



感じた悪寒に従って、2人は左右に飛び退いた。一瞬遅れて、白い触手が床を抉る。



どういうことだ、と混乱した頭で必死に考える。『親父』とは?自らにまで実験を施したということか?それとも、真の黒幕は息子であるあの男だと?・・・・・いや、それ以前に、今までに会ったあの生物は、あんなにもはっきりとした殺気をぶつけては来なかった。本当に、『全く同じ』なのか?



混乱する彼らを嘲笑うように、生物が嘶いた。もの悲しげな『あの子 』のものとは違う、狂気を孕んだ獰猛な声。ぞくりと、背筋が粟立った。


「グリーンは、そこにいて!」



未だ自身から視線を外そうとしないソレに、レッドは小さく舌打ちし、駆け出した。狙っているのがレッドだというのならば、固まって行動していれば危険がグリーンにも及ぶ。



「レッド!」

「動くなよ?」



男が懐から何かのスイッチを取り出し、忠告した。見覚えのあるそれに、グリーンの視線が険しくなる。



「流石にあんなモンに追っかけられてる上に、可愛がってる手持ちにまで攻撃されちゃあ、可哀想だろ」



何を白々しい、と睨みつけた男の表情に、グリーンは妙な違和感を覚えた。



(なに、この、人・・・・・)



男は笑っていた。笑っていたが・・・・・空っぽだった。ハフウのような狂気も、ドトウのような愉悦も、怒りも悲しみも憎しみも、何も感じない。



そもそも、レッドが連れ去られたのは、彼にしか解らない『秘密』があったからである。レッドが口を割らないままに死ぬことは、男にとっても都合が悪いはず。何故、あの生物にレッドを襲わせているのか。




「っく!!」



苦しげな声に、思わず男から視線を反らす。体制をすぐさま立て直したレッドだが、息が上がっている。無理もない。拉致されてから今まで、殆ど休憩などできていないのだから。



(この、ままじゃ、まずい)



あの生物をどうすれば無力化できるのかわからないが、早く何とかしなければ、レッドの体力が尽きてしまう。



気づかれないよう、男の手元を見る。・・・・何とかあのスイッチさえ奪うことができれば!



(レッド・・・・・)



歯痒さを感じながらも、今はレッドを見守っている外に何もできない。
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