PKSP3
□ほどけた結び目
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運が悪かった、と言わざるをえない。ジャケットだけを見て直感で選んだDVDが、まさかホラーだとは思わなかったんだ、と、容赦なく凍り付く室内に、ゴールドは内心言い訳をす
る。ゴールドとしては、アクション物のつもりで借りてきたDVDがホラーであっても、面白ければそれで良い。しかし、数人は相当苦手なのか、お世辞にも顔色がいいとは言えない。
「ど、どうしてこんなもの借りてきたのよぉ」
「・・・・悪ィ」
余程嫌なのだろう、珍しくクリスタルが弱々しい声音で責めてくる。隣に座るサファイアがこくこくと頷いた。彼女もこの手のジャンルは不得手らしく、抱き締めているクッションが、キリキリと痛々しい音を立てている。その内綿が出てきそうだ。
ゴールドはこっそりと反応を窺った。お子様組には少々辛いものがあるようで、さっきからホウエン組は悲鳴を上げている。見るからに苦手そう、と思ったイエローは、やはり苦手らしく、目を瞑り、耳を塞いだまま動かない。・・・・もしかすると、寝ているのかもしれないが。シルバーは顔を顰める程度ではあるが、歓迎していないのは明らかだ。
クオリティ自体は低くねぇんだけどな、と思いながら、一番反応の気になる3人に目を向けた。
まず視界に入ったブルーは、楽しそうに観賞している。彼女はホラー映画を好むらしく、時折シルバーも巻き込まれているから、これは予想通りだ。グリーンも相変わらずというか何というか・・・・・彼は基本的に何を見ても反応が変わらない。それもある意味恐いが。
あと1人。ゴールドは顔が引き攣るのを感じながらも、レッドの様子を窺った。ブルーとよく一緒にいるため、ある程度の耐性はあるかとは思うが、外せばボロクソに言われそうだ。容赦のなさはある意味愛情表現なのだろうが、自身が失敗だと自覚していることを責められるのは、少しばかり辛い。
果たしてレッドは・・・・・・無表情だった。腕と足を組み、嫌がるでも喜ぶでもなく、ただ醒めた瞳を向けている。何となく恐い。とても恐い。
視線に気づいたらしいレッドが、此方を見て軽く嘆息する。隣に座るグリーンがにこりと笑いかけてくれたが、正直レッドの反応で頭が一杯だ。
そんな中でも、ストーリーは着実に進んでいる。逃げ惑う少女に次から次へと襲い掛かる恐怖。そろそろクライマックスなのか、少女の悲鳴も段々と悲壮なものになりつつある。
そんな、中。
『きゃあああぁぁぁ!!』
「「「「「ぎゃああああぁぁぁ!!」」」」」
少女の親友が悪霊に捕まり、そのまま腹部で引きちぎられた。画面が一気に赤に染まる。今までの志向と全く違うグロテスクな展開に、思わず少女と共に絶叫した。
「恐ぇぇ!恐ぇぇぇ!!」
「もう嫌!何なのこの映画!」
室内が一気に騒がしくなる。この展開は読めなかった。年齢制限大丈夫なの、という妙に冷静なブルーの声が浮いている。
「・・・・レッド?」
ふいに、やや焦ったようなグリーンの声が聞こえ、部屋が再び静まり返った。