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□そしてまた始まる
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ドクドクと、心臓の音が煩い。ぬるりとした感覚や、血の匂いがより焦燥感を駆り立てた。
「クソッ!!」
わらわらと集まってくるイミテーションをきつく睨み据える。
「邪魔だっ!!」
唸るように言うと、スコールはガンブレードを閃かせた。甲高い悲鳴を上げて、偽りの人形たちは壊れていく。しかし、スコールにはそれすらもどうでもよかった。
「おいっ!しっかりしろクラウド!!」
腕の中でくたりとしているクラウドを、軽く揺さぶる。その衝撃のまま、身体が揺れる様は、まるでよくできた人形のようで、スコールの不安をより一層煽る。
油断したつもりはなかった。言い訳に過ぎないが、決して慢心していた訳ではない。背後から攻撃されたスコールを庇うように、クラウドが身体を滑り込ませたのだ。バキバキと、骨の砕ける音が聴こえ、衝撃に耐え切れなかった身体は、近くの岩まで吹っ飛ばされた。
「出血が酷い・・・・・!!」
重傷なのは腹部だが、岩に激突した際に、頭も強く打ったらしい。鮮やかなブロンドは赤く濡れ、つうっと一筋、こめかみを伝った。
クラウドは、見た目に反して、仲間内でもかなり丈夫な方だ。少々の怪我ならすぐ治るし、そもそも、そう簡単には怪我をしない。本人曰く『少し特殊な体質』なのだという。しかし、今のスコールにとっては、何の慰めにもならなかった。
「とにかく手当を・・・・っ!」
服を捲り上げると、現れた傷に、思わず目を背けたくなる。『斬る』というよりも『叩き付ける』形で与えられた傷だ、出血は、下手をすると肋骨が刺さっているかもしれない。内臓が傷んでいないことを祈るしかない。
「ちょっと待っててくれ・・・・・」
手近な岩に凭れさせ、スコールは立ち上がった。途端、くんっと服を引っ張られる。
「・・・・・ぃじょ、ぶ・・・・・」
弱々しい声に振り向くと、蒼い瞳とかちあった。しかし、焦点は合っていないし、顔色は最悪だ。おそらく、意識も朦朧としているだろう。
「何が大丈夫なんだ!?あんたは休んでてくれ。応援を呼んでくる!!」
「・・・・・・ぃ、、だ・・・・・ら・・・・」
切れ切れに、クラウドが言う。いや、もはや『喘ぐ』に近い。
「おいっ!しっかりしろ!!」
大丈夫だと、そう言いたいのか。まともに話すことすらままならない状況で、心配するなと、そう伝えたいのか。
脈はあるが、呼吸は浅く、早い。のんびりしている暇はない。助けを呼びに行く余裕はない。スコールは、なるべく傷に障らないよう注意しながら、クラウドをおぶった。もう、意識を保つことすら限界だったのだろう。クラウドは抵抗しなかった。
その身体は、不安になる程軽かった。