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□そして私は夢を見て
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・・・・・行きたくない、もの凄く。
ジャングルを目の前に、クラウドは溜息を吐いた。
一歩でも踏み出せば、其処は食人モンスターがうじゃうじゃいる未開の地。一般人は、まず入ろうとはしない。というか、入れない。
ちなみに、直前に立ち寄った村でジャングルについて訊いたところ、見知らぬ老婆に『若い子が命を粗末にするんじゃない』と諭された。完全に自殺志願者扱いである。
何故そのような場所に彼がいるのかと言うと、それは数時間前に遡る――――。
今日は朝から二件程配達の仕事が入っていた。どちらも大したことはない仕事であり、配達先がミッドガル内であったこともあって、そう時間はかからなかった。
(帰って・・・・・セブンスヘヴンの準備にはまだ早いな。)
抜けるような青空を見つめ、クラウドは独りごちた。午前中に仕事が終わることは結構稀である。マリンやデンゼル辺りが『遊ぼう』とくっついてくることだろう。どちらにせよ帰ろうと、フェンリルに跨ろうとした、その時。
「っ!?」
猛スピードで突っ込んできた車から腕が伸び、クラウドの手首を掴み、引き摺り込んだ。
「・・・・・またお前達か・・・・・」
地の底を這うような声が出たが、誘拐犯(としか言いようがない)はへらへらと笑うばかり。
「フェンリル・・・・・」
「心配すんな。ちゃんと送り届けるぞ、と。」
ウインクまでして得意げに言ってくるが、そんな心配はしていない。
「・・・・・レノ・・・・・」
「あいよ、と。」
「どういうことか説明しろ。」
途端にレノが面倒くさそうに顔を顰めた。どうせ何処ぞの馬鹿社長の命令だろうとは思うが、いきなり人を拉致した挙句、何の説明もなしというのはいただけない。
「どの道着いたら解ることだぞ、と。」
「言わないのなら暴れる。」
「暴っ・・・・ちょ、クラウドさん!?」
宣言通り拳を握ったクラウドに、レノが慌てて待ったをかけた。ジェノバ細胞持ちを甘く見てはいけない。彼に本気で暴れられたら車が大破する。むしろ、レノも大破する。
「説明するから!!説明するから止めて〜!!」
「だったら、さっさと説明しろ。」
ぎゃあぎゃと騒がしい後部座席の二人(といっても、実際に五月蠅いのはレノだけだが)をミラーでちらりと確認し、ルードはぽつりと呟いた。
「大人しくしていてくれ・・・・・・」