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□可憐なる悪戯
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「「スコール!!」」
よく言えば明るい、悪く言えば騒がしい声に、スコールは眉間の皺を深くした。
正直あまり関わりたくはないが、己の名を呼ばれれば、無視し続けることは難しい。
「・・・・・何か用か?」
厄介事には巻き込むな、という意を込めて睨んだものの、目の前の二人には効き目はないらしい。
目の前の二人−−ジタンとバッツ−−は、非常に愉しそうな笑みを浮かべ、スコールの元へと向かっている。本当に愉しそうだ。
まるで、玩具を見つけた子猫のように。
(嫌な予感がする・・・・今は休息中だぞ!?まさか、何か妙なことをやらかすつもりじゃないだろうな!?)
思い切り睨みつけてくるスコールに怯むことなく、二人は彼を囲むように位置を変えた。『逃がさない』と言わんばかりのその行動に、ますます機嫌が悪くなる。
「いや〜、いいものやろうと思って!」
「いらん。」
「まぁまぁ、そう言わずに!」
「いらん!腕を掴むな!」
二人の笑みが、段々と深くなっていく。ニヤニヤ、という表現がピッタリの笑顔だ。
「だぁいじょうぶ!似合う似合う!」
(似合う!?何を付ける気だ!?)
「そうそう!いけるいける!」
(いける!?)
声には出さぬまま、不吉過ぎる言葉に言い返す。・・・・・まぁ、口に出したところで、効果はないのだが。
「んじゃ、そういうことで!」
「ちょ、止め、」
「「止めない。」」
二対の悲鳴と、怒号。それに、爆音にも似た破壊音。
何事かとオニオンナイトは振り返り−−−−そのまま、固まった。
ぎゃあぎゃあと叫びながら逃げ回るジタンとバッツ。ガンブレードを構え、彼らを追い掛けるスコール。
それだけならまだいい。こう言っては何だが、よくある光景だ。オニオンナイトが固まったのは、そこではない。
スコールの頭、頭頂よりいくらか左にズレた辺りに、花が着いている。正確に言うと、花を模した髪飾りが。白い可憐な花が幾つもあしらわれたそれは、彼の端正な容姿と相俟って、意外にもさほどの違和感はなかった。
その表情が、カオスも逃げ出しそうなものでさえなければ。
(どうでもいいけど、休みもせずに何やってんの、あの人たち・・・・・)
あれで皆、自分よりも年上だというのだ。嫌になる。
「随分と、可愛らしいことになってるな。」
厭味なのか冗談なのか、それとも本心なのか。今ひとつ判断し辛い声音で、クラウドがぽつりと呟いた。
「クラウドさん、アレ、放っておいていいの?」
半ば呆れを滲ませながら、オニオンナイトは声を掛けた。できれば止めて欲しい。彼には、それができるだけの力量もある。この際、実力行使でもいい。
「ただ、じゃれあっているだけだろう。スコールも本気じゃない。」
クラウドはそう言って、僅かに瞳を細めた。明るい蒼には優しい光が燈されている。今、般若のごとき表情で武器を振り回している少年が知れば、羞恥のあまり卒倒するかもしれない。オニオンナイトはこっそりそう思った。
「どうでもいいけど、何で取らないんだろうね、アレ。」
未だスコールの頭で揺れている髪飾りをぼんやり見ながら、オニオンナイトは呟いた。元凶に制裁を加えるのもいいが、まずは取ってしまえばいいのに。
「おそらく、髪に絡まって取れないんだろう。」
後で取ってやらないとな、と事もなげに返すクラウドを、何とも言えない顔で見つめた。
「・・・・・どうかしたか?」
「ううん、何でもない・・・・・。」
隣にいる戦士が、女装さえ完璧にこなす麗人であることを思い出し、オニオンナイトは溜息を吐いた。