PKSP2
□愛し君へ29
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覚悟はいい?
逃がさないよ!
何度、紅茶を噴きかけたか。
ブルーは、グリーンの報告を聴きながら、ひっそりと息を吐いた。
このくそ忙しい中、シンオウまで出掛けていた親友の報告は、自分の予想の遥か上を飛び越えるものだった。
「何て言うか・・・大変だったわねぇ・・・」
他に言葉が見つからず、月並みな感想を漏らす。
己の勘だけでレッドの居場所を当てたのは、凄いと思う。
他の者なら、愛の力ね、などとからかうのだが、グリーンにそれが当て嵌まるのか、判らない。
(むしろ、本能かしら・・・?)
彼ならば、運と勘だけで生きていけるだろう。
しかしながら、内容は、そんな軽いものではなかった。
レッドの両親を惨殺し、彼自身に瀕死の重傷を負わせた相手が、今回の敵。
果たして、レッドはまともに戦えるのだろうか。
レッドは強い。単純なバトルや身体能力はもちろん、精神(こころ)が。
彼の機転やバトルセンスは、その精神力からきている。怒りを覚えていても、危機に瀕していても、レッドは何処か冷静に、事態を判断している。
それに、レッドの存在は、周りへの影響も大きい。
もし彼が戦えなければ、図鑑所有者たちの士気も、落ちるだろう。
無論、それは、ブルー自身にも当て嵌まることだ。
「レッド、大丈夫なのかしら・・・?」
思わず漏れた呟きに、グリーンが暗い顔をした。
流石に、言えなかった。
レッドが死ぬことを、『視た』、なんて。
厳密に言えば、何かを映像として見た訳ではないが、この際そんなことは、どうでもいい。
(でも、俺の『知ってる』未来は、絶対じゃ、ない。)
おそらくは、可能性の一つにしか過ぎないのだろう。
(だから、変えられる。)
いや、変えなければ。変えてみせるのだ。
そう決意していると、ブルーに頭を撫でられた。
暗い表情のグリーンを心配してのことだろう。
ブルーは、愛情表現が歳の割には幼い。抱きしめる、頭を撫でる、手を繋ぐは、彼女のよくする行動だ。
ブルー程ではないが、レッドも、どちらかといえばそういった幼子のような触れ合いを好む。
おそらくは、幼少期に親の愛情に恵まれなかったことが原因なのだろう。
後輩や大人達は不審がるが、彼ら三人にとっては、この歳不相応の行動は、不可欠なのだ。