PKSP2

□愛し君へ25
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どう・・・?



これで、懲りた・・・?




















初めに見えたのは、楽しそうな一家団欒だった。



「げ、レッド、こんな本面白いかぁ?」



長い銀髪を一つに纏めた男性が、幼いレッドを見て、妙な声を挙げた。



この人が、バーミリオン、さん・・・



名が表すとおり、彼の瞳もまた、赤い色を宿している。



「おもしろいよ?父さまも、よむ?」



レッドが笑顔で本を差し出すが、彼は苦虫を噛み潰したかのような表情をしただけだった。



「父さまには、ちょっと難しいのよ、レッド。」



クスクスと、楽しそうに笑いながら、ハーライトが我が子の頭を撫でる。



「むずかしい?」

「そう、難しいの。」

「・・・お前、人を馬鹿にしやがって・・・」



そう言ってバーミリオンがハーライトを睨むが、にこりと微笑まれ、拍子抜けしたかのように溜息を吐いた。



その時、だった。



ピンポーン・・・。



急に響いたチャイムの音に、夫婦は顔を合わせた。



「こんな時間に客か?」

「可笑しい、わね・・・。」

「とにかく見てくる。レッド頼むわ。」

「ええ・・・。」



嫌な予感がする。



言い知れない不安にぶるりと身体を震わせ、ハーライトはレッドを抱きしめた。レッドが、不思議そうな顔で見上げてくる。



大丈夫、きっと、――――



パチュン



大丈、夫・・・。



パチュン、パチュン。



「な、んの・・・音?」



グリーンも、聴いたことのない音に首を傾げる。



「お邪魔しますよ、と」



ズカズカと男が数人侵入してきた。その先頭の男は、血に塗れていた。



おそらくは、返り血。



「貴方たち・・・!!」



ハーライトも気付いたのだろう。キッと男たちを睨みつける。



「旦那さん、災難だったなぁ。」



アンタが、大人しくしてねぇからだよ。



「復讐のつもり?・・・それとも、データを渡せ、と?」

「察しがいいじゃねーか。」

「お断りするわ。」

「冷てぇ女だなぁ。俺らは別にいいけどな。」



ギュッと縋りつく小さな手を離させ、ハーライトは素早く耳打ちした。



「レッド、逃げなさい。・・・母さまも、父さまも、すぐに・・・追いかけるから。」



え、と不安そうに瞳を揺らすレッドを見て、グリーンは苦しくなる。



ハーライトさんは、死を覚悟している。



「さあ!!」



そう言って、レッドを立たせ、走らせた。



しかし。



「甘めぇんだよ!!」



男に命令されたグラエナが、レッドの足を噛んだ。



深く、深く。



「ひあああぁあぁあ!!」



悲鳴を上げ、必死に放させようとしているレッドを見て、男たちが哂う。



余程深く噛まれたのだろう。白い脚を伝う血の量は尋常ではなく、水溜りのようだ。



「レッド!!・・・!!」

「おおっと、アンタに逃げられたら困るんだよ!」



男が三人がかりでハーライトを捕まえ、組み敷いた。



「こっちはこっちで楽しむとして、アイツ、まだやってんのかよ」



どことなく呆れたような口調で、男が言う。



・・・まだ、やってる?・・・



耳を澄ますと、ぐちゃり、べちゃりという音がする。



まるで、何か柔らかいものを、壊しているかのような。



まるで、粘着質な『何か』が、落ちるかの、ような。



「っひっ・・・」



頭の中に、あの光景が広がった。



誰なのかも解らないほどに、ぐちゃぐちゃになった、死体。
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