PKSP2
□愛し君へ23
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後戻りなんて
もう、できない―――
頭が、回らない。
「もしかして、襲われてたのぉ?」
ドシャリ、と音がする。
コポコポと、足元に水溜りが広がっていく。
赤い、あかい、アカイ・・・・・・・。
「ひっ・・・」
耐えられなくなったのだろう、イエローが口元を覆い、顔を背ける。
「こ、ころ、殺し・・・!!」
エメラルドが呟く。滑稽なほどに、声が、身体が震える。
堪らずグリーンに抱きつく。彼は放心したように動かない。
「じゃあ、アタシ、人助けしちゃったのかしらぁ?」
「・・・・るな・・・・」
「何ですって?聴こえないわよぉ?」
「ふざけるな!!コイツが何をした!?何で殺した!?この人殺し!!」
女を睨みつけ、グリーンが怒鳴った。普段とは全く違う雰囲気に、エメラルドは戸惑った。
同時に悟る。彼は、激怒している。そして、・・・同じくらい、哀しんでいる。
「『人殺し』だなんて、人聞き悪いわねぇ。コレが、『人』だって言うのぉ?」
そう言って、女がソレを蹴った。
ぐしゃり、と嫌な音がする。
血が噴出し、女を汚した。
「やだ、汚ぁい。」
心底嫌そうにそう言って、手を振る。
「大体、『殺した』じゃなくて、『処分した』って言ってよねぇ。」
「しょ、ぶ・・・ん?」
「そぉよぉ、処分。勝手にコレが逃げちゃって、もういらないから、処分したの。」
何を言っている?処分?いらない?
「また失敗だなんて、嫌になっちゃうわぁ。・・・ま、失敗作を処分したくらいて、ごちゃごちゃ言わなくてもいいでしょぉ?」
「失敗って何だ!?実験のことか!?」
「!!何で、それを知って!?」
女の様子が変わった。神経を逆撫でするような笑みも、間延びする語尾も止め、グリーンを睨む。
「人なのに、ポケモンなのに、勝手に自分たちの都合で攫って、実験して、殺して、失敗!?五月蝿い!!ふざけるな!!」
グリーンは怯むことなく、一息に言う。退く気など、全くない。
「ふふ・・・あっはははははは!!」
急に女が笑いだした。
「きゃはははは!!いいわ、アンタ、アタシたちを追いかけて来なさいよ!?気に食わないならね!?アンタはマサラの子・・・そして、あの子の知り合い!!いいじゃない、最高よ!!」
狂ったように笑いながら、女は消えた。