PKSP2
□愛し君へ19
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もう逃げられないなんて、
誰が決めた?
部屋に紙を捲る音が響く。
流石は本家、オレが調べるよりやっぱり早かったな。
ウシオ団の資料に目を通しながら、レッドはそう思った。
最も、そうでなければ、此処に来るメリットがないが。
ベルリッツ家の家督争いは、レッドの与り知らないところで、随分と発展していたらしい。数年前にはなかった派閥すらある。
全く、継ぐ気のない人間を勝手に祭り上げるなよ。
昨日から何度も、媚びるような態度を取る者がレッドを訪問しては、自分がレッド側の人間であると強調していくのだ。
元より地位や財産に興味のないレッドには、その気持ちはよく解らない。
余りの鬱陶しさに、かぐや姫みたく何か無理難題でも押し付けてやろうか、などと考えていたレッドは、書類のある一点に目を留めた。
「・・・嫌な予感ほど、よく当たるもんだな。」
吐き捨てるように呟くと、荷物を手繰り寄せる。中に入っていた一冊のノートと、書類とを照らし合わせた。
「やっぱり一致してる。・・・これで確実に、奴らは、・・・オレを狙ってくる。」
ふう、と溜息を吐く。今更、自分が狙われている程度のことで取り乱したりはしない。
ただ、虚しいと思った。
「にしても、これからどうしようか・・・?」
ここまで情報があれば、マサラに帰っても別に問題はないのだが、いかんせん状況が状況だ。マサラに被害が及ばない保証はどこにもない。かといって、シンオウにいても行動ができない。
「どっかを拠点にして動いた方がやりやすいんだけどな〜〜。」
頭を抱えて唸る。そもそも、マサラを発つ前にちょっとした小細工をしてきたのだ。その落とし前もつけなければいけないのだが、今はそれどころではない。・・・というか、ぶっちゃけ面倒くさい。
悩んでいる暇はないが、失敗は許されない。
「しかし、これは・・・オレの技術じゃ、ちょっと厳しいかも・・・。マサキのアレで何とかならないと、今から造るのは無理だしな・・・。」
再び書類を見ながら唸る。どのみちカントーには帰らなければならないではないか。
コンコン。
悩んでいるレッドの耳に、ノックの音が届いた。
このタイミングで客かよ。
溜息混じりにはぁい、と返事をし、ドアを開けた。