PKSP
□愛し君へ17
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追いつかれないようにと、後ろばかりを気にしていたプラチナは、ちょうど部屋から出てきたレッドに、思い切りぶつかってしまった。
「きゃあっ!」
「うわっ!・・・って、プラチナ?」
驚きながらも彼女を受け止めて、レッドは瞳を丸くした。
「レッドお兄様!?お久しぶりです!!」
一瞬恥ずかしい、と思ったプラチナだったが、レッドの顔を見て、そんな気持ちなど吹っ飛んでしまった。
「お兄様、私・・・」
話したいことがたくさんありすぎて、何から話していいのか判らないくらいだ。そんなプラチナを見て、レッドは柔らかく微笑むと、オレの部屋においで、と言った。
「はい!!」
お兄様が、お話を聴いてくださる。それだけでプラチナは嬉しくて楽しくて、先程までの沈んだ気持ちは、再び膨らんでいった。
「大きくなったな、プラチナ。」
レッドはそう言って、瞳を細めた。
従兄妹といえども、カントーとシンオウという地理的な隔たりに加え、相続問題まであるため、レッドがプラチナに会うのは、これが二回目だ。
一回目はレッドがポケモンリーグを優勝してすぐ、祖父のあまりにも強い勧めに折れて、ベルリッツ家の伝統に挑んだときだった。すでにリーグを制覇したレッドには簡単すぎるくらいで、実際は三日も滞在していなかった。使用人たちは、プラチナを会わせまいと必死だったが、プラチナ自身が周りの目を盗んで、レッドに会いに来たのだ。そのときに二言三言交わしたに過ぎない。
その程度の仲なのに、ここまでプラチナが自分に懐いていることが、レッドには不思議だった。
この子だって、オレの話は相当悪く聴かされてるのにな。
そんなプラチナを可愛らしく思う反面、レッドは心配だった。
「お兄様、ご活躍はお聞きしています。」
そんなレッドの心配に気付くことなく、プラチナは終始笑顔だ。
「活躍って、何かしたっけか・・・?」
本気で心当たりがなく、レッドは首を傾げた。
「ええ、たくさん。ポケモンを悪事に使う輩を懲らしめたり、誘拐された子どもを助けたり。」
そう言われれば、そんなこともあったか。
名声に興味のないレッドは、自分の行った善行など、いちいち憶えていない。
・・・一般人が聞けば、「それくらいは憶えておけ!!」と言いたくなるような内容ではあるが。