PKSP
□幸せの唄
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さて、どうしようか。
先程は意識せずに歌っていたが、今度は聞き手がいる。自分の歌唱力はよく解らないが、特別上手い、というわけではない。
レッドは期待した眼差しでこちらを見ている。滅多にない彼のおねだりだ。聞いてあげたい。
あげたい、のだが。
「〜〜〜っ」
「どうしたの?嫌?」
「嫌、じゃ、ない・・・。」
嫌ではないが、何とも気恥ずかしい。
そんなグリーンを見て、レッドは苦笑した。恥ずかしいのだろう、と感じとったのだ。
やっぱりいいよ、そう言おうとした矢先、ふいに抱きしめられ、レッドは瞳をしばたかせた。そのまま胸の辺りに顔を埋めさせられる。
「ちょ、グリーン?」
「いいからっ。」
いいって何が。
そう尋ねようとグリーンを見上げて、レッドは悟った。
グリーンの顔は、真っ赤になっている。
恥ずかしいながらも、歌ってくれるつもりなのだ。
レッドは、ふわりと笑った。花のような笑顔に、グリーンも釣られて笑う。
「・・・じゃあ、」
「うん。」
意を決したように、グリーンは深呼吸した。流石に恥ずかしいからか、視線をレッドから外し、伏し目がちに歌い始める。
プリンの歌声聞こえるよ
ぼうやもそろそろおねんねだ
ポケモンたちも眠ってる
可愛いぼうやも眠ろうか
父さん母さんの宝物
明日も元気にお遊びなさい
さあさ、今はねんねだよ
プリンの歌声聞こえるよ
ぼうやもそろそろおねんねだ
レッドも瞳を伏せ、身体をグリーンに預け、ゆったりと聴きいった。
「・・・綺麗な唄。」
うっとりとした声でそう呟くレッドに、グリーンはさらに顔が紅くなるのを感じた。
「・・・お粗末様でした。」
「いえいえ。」
そう言ってレッドはくすくす笑う。
「何で笑うんだよ・・・」
「ごめんごめん。だって、グリーン、顔真っ赤。」
人が恥ずかしいのを我慢しているのに!!
グリーンはごまかすようにレッドを抱きしめる力を強くした。
それにも楽しむように笑うレッドに、何とも言えなくなる。
「また聴かせてね?」
「・・・今度はお前のが聴きたい。」
そう返すと、レッドは少しだけ瞳を見開いて、また花のように笑った。
End.