PKSP
□“日常”への第一歩
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「「「誕生日おめでとうシルバー!!」」」
扉を開けた瞬間に降り注ぐカラーテープの雨と、図鑑所有者たちの綺麗にハモったコール。
予想だにしなかった事態に、シルバーの思考は完全に停止した。
待て、待て待て。
今日は図鑑のメンテナンスじゃなかったのか?グリーン先輩は、そう言ってたし、彼はともかく、ゴールドが秘密にしていられるはずがない。
「せ、先輩ぃぃ!?オレ聞いてないっスよ!?」
……あー。そういうことか。
「うん。だって言ってないし」
「いやいやいや!!何でっスか!?」
「お前だったらすぐバレそうだから」
ぎゃんぎゃん騒ぐゴールドは華麗に無視したブルーが、笑顔を浮かべて近寄ってきた。
「誕生日おめでとう、シルバー!!」
「ありがとう姉さん。でも……これは?」
豪華な料理とケーキ、綺麗に飾り付けられた部屋。どれもこれもがキラキラしたこの空間で、自分だけがひどく場違いに感じた。
「これはって……」
ブルーは、困ったような、でも少し寂しそうな顔で傍らのレッドを見た。
「シルバーの誕生日パーティーだよ」
レッドはさも当然、といった様子で答えた。
誕生日パーティーだなんて。そんなこと。
「おーい!はやくこっち来いよシルバー!!」
わざわざしてくれなくても、いい、のに。
「これくらいでいちいち驚いていたら、やっていけないぞ」
未だに固まっている思考に、グリーンの声が聞こえた。
「これからは、コレが日常なんだから」
日常?
こんなにも騒がしくて、大掛りで、……暖かいものが?
「シルバー?どうしたの?」
「こっちに来てくださいよ!お料理、上出来なんですよ」
「……今行く」
ありがとう、ありがとう。
どうしよう。
幸せ過ぎて、笑ってしまった。
End