SYMPHOGEAR

サマーバレンタイン
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「…サマーバレンタイン?」
「そう、そうなんですよ! 7月7日はサマーバレンタインなんです!」

…7月7日って言ったら七夕だろ…?

そんな、あたしの疑問に答えてくれてるのか単に自分が喋りたいのか、響はその…サマーバレンタイン?について説明してくれた。

えーと、要は…

「某チョコレート会社の陰謀か」
「…奏さん、それは言ったらダメですよ…」

…いや、事実だし。とはさすがにいえず、曖昧な笑みを向ける。

…に、しても…サマーバレンタインねぇ。

「サマーバレンタインって、なにするんだ? やっぱ、プレゼントとか渡したりするのか?」
「よくわかりません!」
「なんだそりゃ」

何故か全力な響の返答に、思わずツッコミをいれる。
…解ってないのに、口にするとか…まぁ、響らしいといえば響らしい…のか?



『良く解んないですけど、未来にプレゼントは渡すつもりです』

帰る道すがら、別れ際に言った響の言葉を反芻しつつ、考える。

プレゼント…か。

「…ま、悪くないよな。よし、そうと決まれば…あー、何あげよう。…翼、なんなら喜んでくれるかな…」

思い立ったが何とやら。
そんな事を呟きながら、その手のショップに向かうことにする。

勿論、某チョコレート会社の陰謀に乗るつもりもなく、形の残る物が良い。

…翼が喜びそうな物…か。

「…そーいや、あの髪留め…大分痛んでたような…」

ふと、翼が使っている髪留めが思い浮かんだ。
…うん、悪くないかも。

そんなことを考えながら、その手の物を扱うショップへと急ぐのだった。


***


「つーばさ、これあげるよ」
「…え?」

7月7日、サマーバレンタイン当日。何の前置きもなく、翼に可愛くラッピングされたプレゼントを差し出した。
案の定、というか予想通りというか…驚きと困惑とその他諸々を滲ませた表情で、あたしの顔とプレゼントを何度か交互に見ている。

「奏、…その…今日って何かの記念日とか…だった?」
「記念日っていうか、…今日は何の日か知ってるよな?」
「…7月7日、…七夕?」
「そうそう、七夕」

七夕だと解っていても、どこか腑に落ちない表情を浮かべる翼。

「…七夕なのは解ったけど、…というか知ってるけど、贈り物を貰う意味が…」
「だよなー。…あたしもちょっと前に響から聞いてさ。…サマーバレンタイン、なんだって」
「…サマーバレンタイン?」

…あー、これ。あたしも響から聞いた時、こんな顔してたんだろうな…。

不思議そうな顔をする翼を見て、そんな事を思う。
漫画とかだと、ハテナマークが飛び交ってそうな感じ。

「…サマーバレンタインってなに?」
「あたしも良く知らない。多分、どっかの何かの陰謀じゃないか?」
「陰謀って…」
「まぁ、響が未来にプレゼント渡すって言ってたからさ、それに倣ってみたんだ。だから、受け取ってくれると嬉しいかな」

そう言いながら、もう一度プレゼントを差し出す。
それなら…と口にしつつ受け取ってくれた翼に、安堵する。

…いや、問題はこっからか。
気に入って貰えなかったら、意味がない。

「ありがとう、奏。…開けても良い?」
「勿論。…気に入ってくれるといいんだけど」
「奏がくれた物なら、何でも宝物だよ。……あ、これ…髪留め?」
「ん。…ほら、翼が使っている髪留め、大分痛んでる様に見えたからさ。…で、たまには違う形…とも思ったんだけど、やっぱ翼には簪の形したやつが似合うなーって。…代わり映えしなくて悪いけど」
「ううん、嬉しい。…ありがとう、奏」

笑顔でそう言ってくれる翼に、今度は本気で安堵する。

それから翼は、あたしの目の前で髪留めを変えてくれた。
…うん、新しいってのは見てわかるけど、やっぱりあんまり変化した様には見えないな。

…そんな事を考えていると、今まで付けていた髪留めを大切そうにしまう翼に気が付いた。

「それ、とっとくのか?」
「うん。…奏、覚えてない? …これも、奏がくれたもの…なんだけど」
「…へ? あれ、そうだっけ…?」
「…もう、やっぱり忘れてる」

文句を口にしながら、頬を膨らます翼。

…言われて思い出したけどさ。今更、そんな事…言えないよな?


頬を膨らませながらも何処か嬉しそうにする翼を見つつ、どう言葉を返そうか思考を巡らせるのだった。






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