H×B
□−conversation−
1ページ/1ページ
「先輩、今日はありがとうございました」
そう言って、ゆかりが軽く頭を下げてくる。
買い物に付き合ったくらいで大袈裟よ、と苦笑をすると、ゆかりは首を横に振った。
「先輩と買い物に行くと、色々学べる事も多いんです。画材の選び方とか、凄く参考になりますし」
「そう?」
「そうなんです。何だか、俄然やる気が出て来ました」
ゆかりのそんな言葉を聞いて、少しだけ昔を思い出す。
初めて自分で、欲しかった画材を買ったとき。
今のゆかりみたいな顔、してたのかな…とか。
そんな事を考えたら、自然と笑みが浮かんでしまった。
「…先輩?」
「…ごめんなさい。ちょっと、今のゆかりと昔の自分を重ねてしまって…」
「昔の先輩…」
ちょっと、口にしてはいけないワードだったかしら。
そんな風に思ったのは、ゆかりが如何にも興味津々です。といった眼で見てきたから。
「…そんな顔しても…たいして面白い話は出て来ないわよ?」
「先輩の話が聞けるなら、なんでも」
「それはそれで、ちょっとハードル高いわね」
「そうですか?」
そうよ。と小さく呟く。
ゆかりにとって、そんなに面白い話題でもなさそうだけど…。
少しだけ、昔話をする事にした。
…話を聞いて、ゆかりがやけに感心したり、共感したりしていたのは、また別の話…――
END