H×B

−rain−
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「雨、ですね」
「雨ね…」

さすが梅雨。といった感じで、ここ数日降り続いている雨。
雨粒が窓を叩く音が、部室内に響いていた。

「たまには外に出て描きたい気分なんだけど…暫くは無理そうね」

先輩の残念そうな声。
何故か、やけに耳に残る。

「早く明けないかしら」
「沖縄は明けたみたいですよ」
「…と言うことは、この辺りはこれから酷くなっていくって事ね」
「…ですね」

それからしばらく、お互いに黙ったままで。
二人だけの部室に、雨音と絵筆を振るう音だけが響く。

…こういう時間も、悪くはない。
いや…むしろ好きなのかも。

先輩と、一緒だから。

「ねぇ、ゆかり」
「…はい?」

不意に名前を呼ばれて、先輩の方へと視線を向ける。

「晴れたら…と言うか梅雨が明けたら、何処かへ出掛けない?」
「何処かって…例えば何処ですか?」
「公園とか…あ、動物園も良いわね。たまには動物も描いてみたいし」

なるほど。
先輩らしいと言えば、先輩らしい。
私としても異存はなく。むしろ先輩と出掛けられるなら…と、素直に「はい」と返事をした。

「…そうなると、早く明けて欲しくなりますね」
「そうね」


そう呟いて、窓の外を見る。


早く梅雨明けしますように、なんて。


心の中で願った。




END



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