H×B

相要
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「………はぁ」
「あらら? 染谷さーん、何だか暗くありません?」
「…順。悪いけど、今はあなたの冗談に付き合う気が起きないの」

いつもと変わらない順の言動だが、今のゆかりはそれにすら苛立ちを覚えた。

8月5日。今日は彼女の誕生日だ。

周りからも幾つかプレゼント、祝いの言葉も貰った。

ただ一人。
本当に祝ってほしい人を除いて。

「いやいや。まぁ、それはそれとして。実は夕歩からの預かりものがあってねー。受け取って貰わないと、順ちゃん困っちゃうゾー」
「…夕歩から?」
「そ。ほら、染谷、今日誕生日じゃない? だから、ね。姫からのお届け物でございまーす」


「………順?」
「あ、お礼は夕歩に直接宜しく。んじゃ、あたしはこれで」


「…全く。夕歩からの気持ちは嬉しいけど…これは…」

順から受け取った包み。
夕歩から。と聞いたお陰か…それとも、せいか。
中身に関して、大方の予想がついてしまう。

「うん…まぁ、気持ちよね。気持ちが…大事…」

わざわざ焼いてくれた、それだけでも嬉しく思うべき。
そんな事を思うも…やはり、ゆかりの心は晴れない。

「…槙先輩」

そっとその名を呟いて、深いため息を吐いた。


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