H×B

猫ときどき狼
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「…さむ…っ」

寮から出た瞬間に感じた風の冷たさに、思わず声が漏れる。
吐く息は白く、冬の訪れを強く感じさせた。

「…先輩…」

少しだけ、人肌恋しくなってみたり。
そういう時に思い浮かぶのは、槙先輩ただ一人で。

―…はぁ、こういう日に先輩を抱き締められたら幸せだろうな…。

温もりも…そんな時に見せる、少し困った様な笑顔も。全て、私を喜ばす糧になる。

勿論、抱き締めるだけじゃなくて…―

「おはよう、ゆかり」

―…そう、そのまま押し倒して。

「…ゆかり?」

―あぁ、でも床は冷たいから、ちゃんとベッドに…。

「ゆかりってば」
「…大丈夫です、優しくしますから」

………。

「……Σ…はっ?!」
「…え?」

何だか物凄く近くで先輩の声が聞こえた様な気がして、顔を上げる。
いつからそこに居たのか…先輩は私の目の前に居た。

「おはようございます、先輩」
「お…おはよう、ゆかり。…あの…今の…」
「…はい?」

―…? 私、今何か言ったかしら?

―あ。もしかして、口に出さずとも伝わったとか。

だとしたら。

「先輩」
「な、なに?」







「放課後、空けといてくださいね」

きっと、この言葉だけで十分だ…―








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