ORIGINAL
□寒い日には
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「さむ…っ」
「…週始めに暑くて死ぬ、みたいな事言ってなかった?」
職場からの帰り道。
そう口にしながら、寒がっている線を見る。
急に冷えてきたから、気持ちは解らなくもない。
…それでも、ちょっと大袈裟に見えるけど。
「あーまぁ、言うほどでもないけどさ。そろそろ、秋冬物出さないとね。夏物だと…夜はちょい寒いわ」
「んー…じゃあ、明日からちょっとずつ衣替えしようか」
「だねー」
少しだけ面倒くさそうに返事をする線。
思わず、苦笑をしてしまう。
「あ…今日、夕飯どうする?」
「んー…なんか温かいもの食べたいよね。シチューとか、おでんとか」
「…今から作るの?」
携帯で時間を確認する。
…どっちも煮込み料理だから…正直、今からだと少し微妙。
「ま、今日は無理だねー。…あ、何ならコンビニおでんでも良いよ。美味しいし」
「ん…そうね。買って帰りましょうか」
「おっでっんーおっでっんー♪」
謎のおでんの歌を歌いながら歩く線に着いていきながら、自宅マンションに一番近いコンビニを目指してみる。
風が吹くと、やけに肌寒く感じた。…気を付けないと、風邪を引いてしまいそう。
…と、しばらく歩いた所で、線が突然振り返った。
「…どうしたの?」
「うん。寒いなーって思ってさ」
「それ、さっきも……線?」
寒いと言う割にニコニコしつつ、私の傍にくる線。
そんな線に腕を取られ、腕を組む形になる。
…伝わる、線の体温が心地好い。
「やっぱさ、寒くなってからのがしやすいよねー。こういうの」
「…夏でも普通にしてたけどね」
「幸せ倍増だよ、倍増。さ、いこっか」
線に促されて歩き出す。
さっきとは違って、寄り添いながら。
「うーん…大根は外せないよね。…あ、そろそろ肉まんとか出てるよね? それも良いなぁ…」
「どれだけ食べるつもりなの?」
「いやー、腹ペコだからねー。結構入りそうだよ」
「線の結構…は、怖いわね」
そんな事を話しながらあるく、少しだけ肌寒い帰り道。
繋がってる部分が、暖かくて…ほんのり幸せな気分になった。
−fin−