ORIGINAL
□Talking about the love affairs.
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「それで…その時、線が…」
「…何、ノロケる為にわざわざ来たの?」
とある日の午後、時間を見付けて姉様に会いに行った。
少し用事があったから、なのだけど…それも済み、空いた時間でカフェでお茶をしている。
「違…っ…、違います。用件はさっき言った筈ですよ」
「…澪玻お嬢さん。凛はただ、からかいたいだけなんで気にしなくて良いですよ」
永時さんに言われて姉様の顔を見る…と、…成程。なんだかニヤついている。
…なんだろう…聡明なイメージがあった姉様がこんな表情…ギャップを感じてしまう。
「何よ、永時。姉妹のスキンシップに口出ししないで頂戴」
「お前の場合は一方的過ぎるんだ。少しはお嬢さんの気持ちを考えろ」
「考えてるわよ、十二分に。…というか、前々から気になってたんだけど…何故、澪玻の事はお嬢さんで、私は呼び捨てなのかしら?」
「そりゃ、お前……何となくだ」
「何よ、それ」
…ん?
…あれ、なんだろう…これ。
「何となくは何となくだ。お前は凛。昔からそう呼んでるんだ、今更つっこむな」
「全く、…永時は昔から本当に…」
……もしかして、私がいること…忘れてる?
そんな雰囲気すら漂う二人のやり取り。
しまいには小突き合いなんてしてる始末。
姉様達の事を知る事が出来て、嬉しいけど…ちょっと……ねぇ?
「…姉様、私の事…言えませんよ」
「えっ? あ、あー……しまった…澪玻が居るんだった…」
「…お嬢さんだけじゃなく、周りの目もちょっと痛くなってきたな…」
苦笑をしながらコーヒーを飲む永時さん。
そんな二人を見る周りの目は、さながらバカップルを見るような物だった。
―…その夜。
「んー…明日は早番だし、そろそろ寝ようか?」
線の言葉に、読んでいた雑誌から時計へと視線を移す。
時間を確認すると、頷いて見せた。
「ん、そうね。あ…えーと、…」
「うん?」
線の口から「寝る」という言葉が出た以上、『そういう事』は無いと解っているけど、ある種の期待を込めて見つめてみる。
何だろう…昼間に見た、姉様達のやり取りにすっかり当てられてしまったみたいで、急に線に甘えたくなってしまった。
そんな私に、肩を竦めてやれやれといった様子を見せながら…―それでも表情を緩ませながら―…キスをしてくれる。
「…満足ですか? お嬢様」
へらっとした笑みを浮かべながら、そんな事を聞いてくる線の額を指で軽く小突いた。
「…バカ。でも…うん、ありがと」
「ん。あーあ、明日早番じゃなかったら続きしてるとこなんだけどね」
残念そうに呟く線に、思わず頷き掛けた。
線はそれを見逃さず、ニヤついた笑みを浮かべながら私の頬を指で突っつく。
「…なに?」
「べーつに。ただ、おんなじ気持ちで嬉しかっただけ」
「もう、…」
「ま、添い寝くらいなら良いよね?」
…添い寝で止まればね。
なんて言いながら、二人で寝室へ。
ベッドに入るとどちらともなく身体を寄せて…抱き合う。
…線の体温が心地好い。
もっと線を感じたくて、身体を擦り寄せる。
「お…? 何だか、今日の澪玻は甘えんぼさんだなぁ。…何かあった?」
「ん…実は昼に、ね…」
昼に姉様達に会ったこと、二人のやり取りにすっかり当てられてしまった事をポツポツと話す。
「…なるほど、それでか」
私の話に、線は納得した様に呟いた。
そして、私の身体を抱く腕の力を少しだけ強める。
これで、身体は完全に密着してしまった。
…どうしよう、ドキドキする。
「…線」
「うん…?」
「ごめんなさい…添い寝だけじゃ、満足出来ないかも…」
言ってから恥ずかしくなって、顔を隠す。
少しの沈黙の後、
「…しょうがないなぁ。明日の朝食、澪玻が作ってよね?」
笑いながらそう言って、線は私の額にキスをしてくれる。
「よし…こうなったら、寝かさないからねー」
「あ…あはは、明日…大丈夫かしら…」
線の冗談とも本気とも取れる言葉に、少しだけ苦笑を浮かべつつ…そのまま、身を委ねた。
次の日の朝、お互いに寝坊して遅刻寸前だったのは…言うまでもない。
…と、思う。
−fin−