ORIGINAL
□I thank.
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「線、この案件なんだけど…、…線?」
資料を渡そうと声を掛けるも返事がなく、疑問に思って彼女の顔を覗き込んでみる。
…可愛い寝顔だった。
「…そう言えば、昨日…」
報告書を纏めるとかどうとかで、彼女が徹夜をしていたのを思い出す。
その上で今日の職務(主に巡回)をこなし、家に帰ってきたのが23時過ぎ。その状態でソファに腰を降ろしてしまえば、こうなるのは自然かつ当たり前の事で。
「線…お疲れ様」
そんな事を呟きながら、彼女の頬にそっと唇を寄せる。
顔を離すと…寝てる筈の彼女と、何故か目が合った。
「ぇ…ら、線…っ?」
「お姫様のキスげっとー。…唇じゃないのがちょっと残念だけどさ」
「な…ん…っ…お、起きてたのっ?」
「んやー…寝てたよ、さっきまでは。澪玻の気配で起きただけ。その後は寝たフリ」
してやったり顔で笑う彼女。
その顔を見てたら、さっきした事が今更になって恥ずかしくなってきた。
「さ、て。いい感じに目も覚めたし…お風呂に入ってこようかな。あ、一緒に入る?」
「は…はいら、ない…っ」
「あらら、残念」
さして残念そうでもない声音でそう口にすると立ち上がり、バスルームへ向かう彼女。
…と、不意に振り返る。
「澪玻ってさ、明日非番だったっけ?」
「非番よ。それがどうし…――」
「ん、別になんでもー」
それだけ言うと、さっさとバスルームへと行ってしまう。
その質問の意味が解ったのは、それから少し経っての事…――
END
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