オレンジ色

□brake
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brake

「ティアのオトコオンナ〜。お前なんか、ツェリ様がいなきゃ何もできないただの庶民だろ〜」

「庶民の分際ででかい顔してんじゃねーよ、バーカ!!」

「ただ魔力がでかいだけだろ。コントロールできなきゃ意味ねーし。キャハハ」

「うっせぇ!! お前らこそ、集団にならなきゃ文句も言えねぇ意気地無しだろ。悔しかったら、一人で来いよ! その喧嘩いくらでも買ってやらぁ」

 見た目八〜十歳の少年三人に罵声を浴びせられ、怒りをあらわにしている、見た目三〜四歳のティア。
 こんな言い争いは日常茶飯事で、この後は必ず取っ組み合いの喧嘩になる。
 今日もそうだった。……いや、もっとエスカレートしていた。

「お前の全てを燃やし尽くしてやるッッ! 炎に属する全ての粒子よ、創主をほふった魔族に従え! いっけぇ〜!!」

「お前、学習能力ねぇだろ。だからバカなんだよ。水に宿る我らが友よ、ユキシロ・ラスティアの名において、その力を貸してくれ! 頼んだゼ? オトモダチ!」

 二人が詠唱すると、炎と水が激しくぶつかり合う。しかし、よく見るとその力の差は歴然。おまけに、炎と水だ。自然の節理でも水の方が有利なのは明白だ。
 徐々に追いやられていく、炎を操るリーダー格の少年・アスナディック・レディオは、額から大量の汗を吹いている。
 必死の形相。それがこんな表情の事を言うんだろうな、とティアはぼんやりと考えていた。
 とその時、下っ端の少年二人がティアを後ろから羽交い締めにする。
 魔力では勝てないとふんだレディオはすぐさま剣を取り、動けないティアに向かってくる。

「卑怯者。魔術で勝てないなら三対一で剣術かよ。お前ホント情けねーのな。貴族としての誇りはただの土埃だったのか? ちょっとは頭冷やせる様、もう手加減はしねぇ。ウォート! 殺さねぇ程度におもいっきり暴れていいゼ?」

 ティアがそう叫んだ瞬間、ティアの放っていた水流がもの凄い勢いでレディオを襲う。
 レディオは背後から水流に飲まれた状態でティアに向かってくる。しかし、水流はティアを避けて左右に分かれ、下っ端二人をも飲み込む。

「そのまま遥か遠くへ流されちまえ」

 ティアは流されていく少年たちを見届けポソっと呟いた。



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