オレンジ色

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 ユーリとケンちゃんの寝顔を見て一息ついた時、俺が閉じ込められていた部屋へと戻った。鬱陶しかった女装も解いて、いつも通りの格好になったことも安心感を得られた一つの理由。でもまだまだ気は抜けない。異世界の少年二人に眞魔国の地を踏ませてようやく、俺たちは安堵することが出来るのだから。

「さて、これからどうしたもんか……」

 ベッドに腰掛け独り言のように呟く。だが一応、話し相手はいる。俺の声に反応して、裏から動いてくれているヨザックが顔を見せた。

「俺とお前がいる。この屋敷から抜け出せないこともないだろうが……」

 上手くいくとも限らない。ヨザの言う通り、抜け出すだけなら容易だろうが、その後の手段が見えてこない。それに、相手の思惑が分からない以上、下手に動くのは得策ではない。

「一番手っ取り早いのは、あの二人がチキュウに戻ってくれることだけど……わざわざ人間の地に連れてきた眞王がそんな親切なことをしてくれる訳がない」

 ということはこの案(というか希望)は消える。やはり俺ら二人で何とかしなくてはいけない。

「……とりあえず俺はもう少し内情を探ってみる。何かあったらすぐに呼べ。あと、無茶したら次はないということを覚えておけ」

「お……おぅ」

 あまりの気迫に気圧される。守れる自信はないが、出来るだけ魔術を使うのは控えておこう。でなきゃホントに、俺何されるかわかんないし。
 俺がビビってるのに気付いてるヨザックが笑う。俺を安心させるように、俺の大好きなあの太陽みたいな笑みで。

「無茶しなきゃ何もしない。そんな不安そうな顔すんな」

 不安なんじゃなくて怖いんだけど、という思いは内心に留めておく。今はまだ波を立てる必要はない。そんな感じで適当に相槌を打っていると、俄かに外が騒がしくなった。ヨザに視線で“何だろう?”と問うと、“さぁ?”と肩をすくめられる。突然の騒動の理由をどちらも知らないので当然の反応だ。次第に騒動が過激化していく。その喧騒に紛れてこちらに向かってくる人の気配。足音から複数人で、兵士ではない。

「ティア、くれぐれも無茶はするなよ?」

 ヨザがそう言い置いて姿を消した直後、部屋の扉が乱暴に開かれる。そこにいたのはこの屋敷の主・フリンさんとユーリとケンちゃん。

「どうして男の人になってるの!?」

 彼女の第一声がそれだった。女装を解いていた俺に驚いているようだった。

「……ティア、いつの間に着替えたんだ?」

「……ってティア!? これが渋谷の言ってた“劣等感刺激されまくり”の普段の姿なんだね? なるほど。確かに格好いいや」

「いや、俺からすれば君たちの方が美人さんなんだけどね?」

 俺の言葉にフリンさんは頷いてくれたが、少年二人は断固として受け入れてくれなかった。

「そんな問答している場合じゃなかった! 貴方、本当にクルーソー大佐の付き人だって言ってた人なのね? この屋敷を出るわ。急いで!」

 説明している暇もないの、とユーリの手を引いて部屋を出ていく。ユーリを拉致られては後に続かない訳にもいかない。状況も分からないことだし、仕方ない。彼女に続こう。ヨザがいると思われる場所に目を向けてから、俺は部屋を後にした。


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