丸魔学園

□saint valentine's day
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一一一…2月14日、バレンタインデー。
女の子にとっては一大イベントだ。
ここ、私立丸魔学園は恋する女の子に優しい。
普通なら、チョコなど持って来ても、没収されるのがオチだが、ここは違う。
恋愛至上主義のツェリ理事長によって、バレンタインデーは公認イベントとなっているからだ。
先生の目を気にせずにチョコを渡せるし、何より先生にも渡せるのだ。女の子たちのテンションが上がるのは仕方がない。

かく言う私もそうなのだし……。




『健ちゃん、有利。ハッピーバレンタイン!日頃の感謝を込めて、はいどーぞ』

私は掌に乗せた包みを2人に渡した。

「ありがと!新月。すっげー嬉しい!」

有利はニカッと笑顔でそう言った。

「ありがと。……これ手作り?」

健ちゃんはちょっと苦い顔をして尋ねる。
いくら私が料理音痴だからって、そんなに警戒することないのに…。
私は唇を尖らせて答えた。

『残念ながら出来モノをラッピングし直しただけだよ。害はないハズだから安心して』
「…ならありがたく頂くよ。ありがと、新月」

私の言葉を受けて有利がフォローを入れる。
……けど、今は虚しい以外の何ものでもない…。

「村田!新月に失礼だって。いくら何でも溶かして固めるだけなんだったら新月にでも出来るって!な?」

有利の言葉はナイフとなって、私の胸に突き刺さる。

「渋谷、新月はゆで卵でさえ作れないんだよ?溶かして固めるなんて高度なこと、新月には無理だって」

……何か真実なだけあって、私何も言えないじゃないか。

『もう、2人共!要らないなら返して!!他の人にあげるから!!』

私は頬を膨らませてそう言うと、2人に渡した包みを取り戻そうとした。
一一一…取り戻せなかったけど…。

「わぁ、ゴメン!言い過ぎた。貰ったことに対しては素直に感謝してるって!」

慌ててそう言った健ちゃんは笑顔だ。隣では有利が、こちらも素敵な笑顔でコクコクと頷いていた。
…何だかんだで2人には甘いんだよなぁ…。

そんなことを思いながら、私は大きくため息をついた。



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