怖い話

□顔見知りの男
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2度目の出会いは自身が制作に携わった番組のスタジオ収録でのこと。酒蔵の中で撮影された女性の背後、パイプの隙間の暗闇にボンヤリと浮かぶ青白い影。ズームされた瞬間、そこにあの男の顔を見たDさんは、思わず声を上げてしまった。そして今回送られてきた写真。またもや、忘れようもないあの顔がハッキリと写っている。

「─というわけで、コイツの顔を拝むのはもう3回目なんだ。そう言う意味では顔見知りって言えないこともないわな」

3枚の写真は、送り主もロケーションも撮影日もバラバラで、互いに何の接点もない。ただ、その場に居るはずのない、ある男が写りこんでいる点だけが共通している。そんな写真が3回もDさんの目に触れた。これは偶然なのだろうか?

「やっぱ偶然・・・ですかね」
「さぁな。ただ、世の中に心霊写真がどれだけあるのか知らないけど、俺はこんな心霊写真を他に見たことがないし、そんな写真があるって話を聞いたこともない」

Dさんは、何か文句があるなら言ってみろ、というような顔つきで私を睨んだ。

「・・で、何かあったんですか?」
「何が?」
「だから・・よくあるじゃないですか、霊障だとか何とか」
「どうかなぁ。身体はどこも具合悪くないし、特に不幸事もないしなぁ」
「じゃあ、その男がDさんの写真に写ってたとかはない?」
「うーん、覚えはないなぁ。オレ写真写り悪いから嫌いなんだよ、撮られるの」
「写す側にしてもそそられませんよ。40過ぎのむさい野郎なんて」
「悪かったな・・・つーか、この年で独身ってのはコイツの祟りなのか?オイ・・」

後は、いつものようにDさんの愚痴を聞くハメになった。

それからしばらくして、Dさんに女の子を紹介する事になった。とりあえず写真を見たい、という先方の要望を伝えると、Dさんは写真の束を私に押しつけ、

「適当に選んどいてくれ」

とロケに行ってしまった。しかたなく、私はDさんの「適当な」写真を選ぶという不毛な作業を始めた。写真を撮られるのが嫌いと言うだけあって、スナップ写真ですら数が少ない。パラパラと写真を繰っていると、後ろからポンポンと肩を叩かれた。振り返ると、番組の女性スタッフが坊さんを一人連れて立っていた。

「今良いかな?この人、○○寺の住職さん」
「あーハイハイ」
「今度番組に出てもらうんで打合せに来てもらったんだ。ちょと部屋借りれる?」
「ちょっと待って下さい・・・」

席を立とうとして、坊さんの視線がDさんの写真に向いているのに気づいた。
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