怖い話

□スミマセン、ウチの娘が
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私が大学生の頃。帰りにタバコを買おうと思って足を止めたときのことでした。6、7歳位の女の子がそばに寄ってきたのです。

「こんにちは」

私は変な子だなと思いましたが一応

「こんにちは」

と返しました。

「なにしてるんですか」
「何ってタバコ買おうとしてるんだけど」

妙に話しかけてくるその子に私はついそっけない態度で接していました。私が財布を出しタバコを買い終えるまでその女の子は「いい天気ですね」とか「何年生ですか」とか話しかけ続けてきました。私は適当に答えていました。私がそこを離れようとするとその子は

「お母さんが呼んでるから来てください」

と言って私の手を引っ張るのです。私はいよいよおかしいと感じました。私に用があるとでも言うのでしょうか。私はなんとか誤魔化して帰ろうとしましたが女の子はこちらを振り返りもせずに「呼んでますから」と言い続け私を連れて行こうとするのです。私はその執念のようなものに引きずられるかのように女の子の後に付いていきました。もしかしたら本当に困っているのかもしれない、と思いもしました。5分ほど歩くと少し大きめの公園に着きました。ブランコやジャングルジム、藤棚やベンチが見えます。夕暮れ近いせいか、人影はありませんでした。女の子は藤棚の方に私を連れて行きました。その公園の藤棚は天井の他にも側面の2面にも藤が伸びるようになっていました。中にはベンチがあるのでしょう。女の子は

「お母さん連れてきたよ」

と藤棚の中に向かって呼びかけました。私からは角度が悪くてそのベンチは見えませんでした。中を覗きたかったのですが私の手をしっかり握っている女の子を振りほどくのがなんだか悪いような気がして出来ませんでした。
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