怖い話

□顔見知りの男
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ある心霊番組の制作をやった時のこと。同じチームにDさんって先輩がいた。

ある日、視聴者から番組あてに送られてきた心霊写真を数人でチェックしていた。その途中で回ってきた一枚の写真。夜の路上、数人でガードレールにもたれて笑い合うその後ろ、あり得ない場所に男の姿。30〜40歳位のアゴのたるんだ中年男。そこまで分かるくらい鮮明に写っている。

「二重写しなんじゃねーの」
「ありがちだよね。パンチ不足」

確かにガイシュツっぽい印象だったし、一目見て怖いって思うような心霊写真じゃなかった。

「どれ・・・」

Dさんもその写真を手にとり、じっと睨み付けた。

「どうしたのDさん。それ使えそう?」

私の問いに、Dさんは写真を見つめたまま答えない。心なしか顔色が変わっている。

「・・・これ送ってきたの誰?」

スタッフの一人が封書の名前と住所を読み上げ、それを聞いたDさんは眉をひそめた。

「何?知ってる人?」
「いや、初耳だよ。送ってきた人に心当たりはない。だけど・・・」

Dさんは写真に写っている痩せ型の男の顔を指差してこう言った。

「こいつに見覚えがあるんだ。間違いない」
「それって知り合いの人の霊ってことなの?」
「そうじゃない。顔見知りの霊・・ってチョット違うか。いや、妙な話なんだけど─」

事の起こりは、Dさんがこの仕事を始めた頃、ある番組に送られてきた心霊写真だった。冴えない中年男の顔が、子供の足下の地面からヌゥッと突き出ている。クッキリと写ってはいるが、アングルがあり得ない上に顔のサイズも大きすぎる。Dさんはその写真をモニター越しに見たのだが、その時は特に強い印象は受けなかった。
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