□チョコレートパイ
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まだ開いている店を見付け、カンクロウは買い物をしていた。
家の冷蔵庫に、何が残っているかは覚えていない。
しかしまさか、冷蔵庫の中身が、一週間前と同じままということもあるまい。
期限の切れた食品くらい片付けてあるだろう。
例え我愛羅が、料理をしていなかったとしても。
不思議な事に、我愛羅は姉弟の中で唯一料理が出来なかった。
テマリから何度教わっても、カンクロウの作る過程を何度凝視していても、いざ自分がするとなると、どうも上手くいかないらしい。
別に、分量を間違えたり、焦がしたりしているわけではない。
なのに。
何故か。
味がしなかったり、加えてもいない食材の味が、舌の上を転がっていたり。
ある意味凄いじゃん。
と思うが、口にすると不貞腐れるから言わないでいた。
けんちん汁でも作るかと、食材を探す。
そのうち、見切り品が山積みとなっている一角を見つけた。
チョコレートだ。
それを見て、今日は二月の十四日が過ぎたばかりだということに気付いた。
カンクロウはしばらく考えた後、その山へ手を伸ばした。
家に帰ると、彼はそのままシャワーを浴びる。
それだけでも、疲れは軽くなってくれた。
「さてと。」
そうして買ったものを取り出し、慣れた手つきで料理を始めるのだ。
しばらくして、玄関の扉が音をたてた。
テマリが帰ってきた。
カンクロウは台所から顔をのぞかせ
「思ったより早かったじゃん。」
「あぁ、ただいま。」
テマリは扇子をおろすと、四つに縛った髪を早々に解いていた。
「まったく助かったよ、あんたが先帰っててくれて。買い物なんて、する気にもなれなかったからさ。インスタントで済ませようと思ってたところだ。」
饒舌にそう言うと、疲れたのだろう、居間のソファーに倒れこみ、そのうち寝息をたて始めた。
姉の言葉に、カンクロウはふと笑う。
考えていることは同じらしい。
彼だって、夕飯なんかテキトウに済ませようと思っていたのだ。
テマリが帰ってくると知らされなければ。
疲れた体で、自分のためだけに食事を用意するなど馬鹿げている。
だから夕飯が出来上がるまで、カンクロウは姉をそのままにしておいた。
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