捧
□暖
3ページ/5ページ
まったく、隣見たら誰も居ないからさ。
躊躇う俺を無理やり背中に乗せた兄は言う。
一人で喋ってたじゃんよ。
有無を言わさずに背中に乗せられ、慌てて身を引いたらば頭から落ちそうになって。
結局、兄の背中に身を預けてしまっていた。
で、後ろ見たら我愛羅石ころほじってるし、足首さすってるし。
挫いたんならそう言えばいいのに、と小馬鹿にした笑いを貼り付けた顔が振り向いて目があった。
深い、緑色。
姉より少し濃いそれに、吸い込まれそうになる。
自分の色素の薄い瞳が、嫌になって顔をしかめたら、笑ったことに機嫌を悪くしたのかと勘違いされた。
詫びの言葉に、別に、と返せば、黒は優しく笑った。
こんな、笑い方をする男だっただろうか。
俺に、背中を貸すような男だっただろうか。
そこまで考えて、自嘲する。
馬鹿馬鹿しくて。
背中なんか貸すわけがなかった。
俺に触れることすら、それ以前に俺を視界に入れる事すら嫌悪していたはずだった。
目が合えば、すぐに反らされた。
.