□暖
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まったく、隣見たら誰も居ないからさ。

躊躇う俺を無理やり背中に乗せた兄は言う。

一人で喋ってたじゃんよ。

有無を言わさずに背中に乗せられ、慌てて身を引いたらば頭から落ちそうになって。

結局、兄の背中に身を預けてしまっていた。

で、後ろ見たら我愛羅石ころほじってるし、足首さすってるし。

挫いたんならそう言えばいいのに、と小馬鹿にした笑いを貼り付けた顔が振り向いて目があった。

深い、緑色。

姉より少し濃いそれに、吸い込まれそうになる。

自分の色素の薄い瞳が、嫌になって顔をしかめたら、笑ったことに機嫌を悪くしたのかと勘違いされた。

詫びの言葉に、別に、と返せば、黒は優しく笑った。

こんな、笑い方をする男だっただろうか。

俺に、背中を貸すような男だっただろうか。

そこまで考えて、自嘲する。

馬鹿馬鹿しくて。

背中なんか貸すわけがなかった。

俺に触れることすら、それ以前に俺を視界に入れる事すら嫌悪していたはずだった。

目が合えば、すぐに反らされた。



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